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奈良で「正論」懇話会 江田元衆院議員講演

日本は常任理目指せ

 奈良「正論」懇話会の第16回懇話会が15日、奈良市内のホテルで約80人が出席して開かれ、元衆院議員で桐蔭横浜大学教授(行政学)の江田憲司氏が「小泉政権の現状と評価」と題して講演した。
 江田氏は小泉政権の現在の最大の課題を外交安全保障と位置づけ、「国際社会の総意は国連の安全保障理事会でしか決められない。国連に代わる新しい枠組みがないのなら、国連をたたき直すしかない」と強調。日本が世界で発言権を増し、情報を得るには「国連の常任理事国になるべきだ」と述べ、20%という実質トップの国連への分担金をたてに取ってでも外交努力をすべきだと指摘した。
 一方、構造改革では医療制度で診療報酬体系まで踏み込めなかった点や、年金制度で財源調達問題を積み残した点を挙げ、「世界一の少子高齢化社会という現実を踏まえた上での大胆でスピーディーな改革ができていない」と分析。
 「参院選も終わり、この秋に決着する郵政改革が政権の正念場になる」と政局の見通しを示した。

── 平成16年3月16日 産経新聞奈良版 朝刊(2面)掲載 ──  


小泉改革「節目の年」

江田憲司氏講演 会員ら聞き入る

 元衆議院議員で桐蔭横浜大学教授の江田憲司氏を招いて,奈良市高畑町の奈良ホテルで開かれた奈良「正論」懇話会。「小泉政権の現状と評価」と題された講演では、小泉政権の政治について、自衛隊のイラク派遣などの外交政策と、医療・年金改革や郵政改革などの内政の両面から詳しく解説。歴代首相とかかわってきた江田氏ならではのエピソードも数多く披露された講演に、出席した会員ら約80人は熱心に聞き入っていた。
 「朝日測量」(大和郡山市)の今井田正光さんは「筋の通った政治が大切だという話に共感を持った」と話し、「日本はもっと国連にものを言うべきだという指摘を心強く思った。明快な講演だった」。また、NPO「21世紀の舞台芸術振興会」事務局長の木村有香さんは「北朝鮮に対して、『日本には切り札がない』といった北朝鮮問題に関する厳しい見方が印象的だった」と感想を述べた。
 内政に関する話題でも、多くの出席者の共感を得た。監査法人「トーマツ」奈良事務所長で公認会計士の西育良さんは「今年は小泉首相の政治改革の正体がはっきりする節目の年だという話が印象に残った」。斑鳩町の小城利重町長は「少子高齢化が進む中で、子育てがゆっくりできる環境づくりが大切だと思う。市町村の限られた予算の中で無駄を見直し、福祉・教育を整えていかなければならない」と話した。
 

【講演要旨】
 小泉政権の抱える一番の問題は外政での安全保障、つまりイラクへの自衛隊派遣にあります。小泉政権は集団的自衛権の政府解釈は維持するとしながら、自衛隊の派遣について、なにも国民に説明していません。
 憲法9条のもと「日本は集団的自衛権を持つが行使できない」というのが政府解釈です。後方支援であろうと、非戦闘地域への派遣であろうと、自衛隊が出ていく以上、集団的自衛権の行使にほかならない。憲法改正に時間がかかるなら、解釈変更をするべきです。しかし、小泉さんは「これは集団的自衛権の行使ではない、政府解釈は維持する」と説明している。
 派遣先が非戦闘地域で、武力行使をしないという特措法をよく内閣法制局が通したと思う。自衛官が殺傷された場合、マスメディアの一部からはすぐさま撤退しろ、責任をとれという声がでる。非戦闘地域ではなくなったので撤退するのが筋のようにみえる。だが、そうはいかないだろうというのが私の見解です。
 世界の世論はイラク特措法など知らない。イラクでは米、英、ブルガリアなども死傷者が出ているが、どこも撤退していない。日本が撤退すれば「こんな及び腰の国だったのか」と笑いものになるだけです。
 撤退すればテロリストの思うつぼ。大騒ぎのうえでの自衛隊派遣だったことは、テロリストもアルカーイダも知っている。ここで撤退すれば国際テロリストが欣喜雀躍するようなことになるから、今後、自衛隊が狙われかねない。ここまで想定したうえでトップリーダーは派遣を決めたのか。
 わたしは自衛隊を海外に派遣してはいけないという立場はとりません。湾岸戦争に日本は増税までして30億ドルを注ぎ込んだが、戦後の感謝広告に日本の名前はなかった。本当はあのときに自衛隊を派遣すべきだったと、今でもくやしい思いがします。
 国際社会の総意は国連の安全保障理事会でしか決められない。当たり前の話です。イラク問題で安直に、これに反対意見を述べる人がいるが、国連にかわる新しい枠組みがあるならいいが、それもない。
 改めて構築するより、国連をたたき直していくほかはないでしょう。それには、第一歩として日本が常任理事国入りするべきだと思います。なぜ理事国入りしなければならないか。それは「壁に耳を当てなければ情報が入ってこない」からです。安保理に入って初めて情報が入ってくる。国連にはものをいうため、これからの国際社会の秩序を考えていかねばならない。
 さて、北朝鮮問題です。私にも名案はないが、この問題は米と中国の枠で解決するほかはない。日本にはカードがないんです。米中を動かすしかないが、幸いブッシュ政権には恩を売っている。だが、小泉さんが何かの策を検討しているとも思えない。被害者の方々をみていると心が痛みます。
 次に内政問題に移らせてもらいます。私は小泉政権が誕生したときはもろ手をあげて支援した。構造改革をスピーディーに進めていただきたいと思ったからです。「構造改革なくして景気回復なし」を引っさげて小泉さんが登板したわけですが、残念ながらわたしがやっていただきたいと思っていた構造改革とはずいぶん離れている感じがします。
 日本の問題は医療費と年金です。日本の少子高齢化は世界一の深刻さです。現在は65歳以上の1人を現役世代4人で支えているが、25年には2人が1人を支えるようになる。一方で、医療費はどんどんかさみ、現在30兆円が、2025年には80兆円に膨れる。消費税を20%上げて、やっと払えるというところです。
 現在、日本の国民負担率、つまり税金や保険料が国民所得に占める割合は38%超。10万円かせいで、3万8000円が税金などで取られる計算ですが、改革を放置すれば、高負担・低福祉の国になることは目に見えている。
 消費税を在任中はあげないと小泉さんは言っているが、まともな人はそれが可能とは考えていない。医療費がかさむ中で、税の無駄を省くなど、制度をどう改革していくかを見える形で示してはいません。
 また、道路公団改革、三位一体の改革、郵政改革という評価はされているが、道路公団については、中途半端な結果に終わっています。政治家がくちばしを挟むルートを残し、こんな改革は空文に過ぎない。三位一体の改革も、使い勝手のよい財源を地方に移していくように検討していくべきでしょう。
 小泉さんはどこへいっても郵政改革しかおっしゃらない時期がありました。それだけに、郵政改革が道路公団並みの終わり方をすれば、小泉人気をあてにして支持していた人も参院選が終われば動きが出てくるでしょう。道路公団民営化はしょせんは官僚の問題。しかし郵政改革では公務員という身分がなくなるという大問題です。これを乗り越えられるかどうか。
 さて、自民党や民主党の二大政党制が叫ばれていますが、外交にも政治にも、一本背骨の通った党はないように思います。今年はイラク問題や構造改革の行方など、自民党、民主党の本質がはっきりとしてくる節目がたくさんある年。わたしもしっかりと見極めていこうと思います。

── 平成16年3月16日 産経新聞奈良版 朝刊(27面)掲載 ──  

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