近聞遠見:「ダンゴ政局」ではないか ----- 岩見隆夫

── 毎日新聞朝刊 2004年11月6日より ──
「盟友ブッシュが勝って、小泉のツキはまだ続いている」という声も聞くが、年末政局は相当に複雑な様相を深めてきた。(略)政権発足から3年半、国家像が見えない、トータル・ビジョンに欠ける、という指摘は自民党の内外から繰り返されてきた。しかし、小泉は耳を貸すふうもなく、<郵政民営化>の一点突破主義に凝り固まっている。しっかりと基本があり、柔軟に応用が利く、という姿ではない。そのために、この年末、内外の難問がダンゴ状態に陥り、迷走が始まっている。
小泉側近を自負する自民党の若手議員の一人は、「小泉体制を支えてきたのは三つだ。第一に原理・原則に忠実、第二は政策本位、第三が甘え、です」と言う。甘え?「ええ、森さん(喜朗・前首相)はじめ、いろいろと……」(略)
だが、甘えの裏には何があるのか。政界ウオッチャーの江田憲司前衆院議員(橋本政権の首席秘書官)が新著「小泉政治の正体」(PHP研究所刊)のなかで、一つの挿話を紹介している。橋本政権時代、小泉がある日、首相官邸に乗り込んできて、橋本龍太郎首相と次のやりとりをした。
「橋本さん、あなたは剣道の達人だ。ただ、いつも竹刀を振っているだけでしょう。今度は竹刀を真剣に持ち替えて、ぜひ改革を断行してほしい」 「どうしたらよいのか」 「いや、総理ならできる、総理がやると言えばできるんだ」最後のセリフはいかにも小泉的である。しかし、やると言えばできるんだ、だったか。
<この言葉をそのまま、いまの小泉首相にお返ししたい。残念ながら期待は裏切られた。緊張感のない慢心の政治だ>と江田は書いている。甘えの裏に慢心、と言ってしまえばミもフタもないが、小泉の馬耳東風もそろそろ改めたほうがいい。そうでないと<ダンゴ政局>はほぐれない。(敬称略)