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2008/02/05
 
 「地球環境問題を考える・・・(2) 京都議定書の真実(上)」

 97年12月といえば、北拓、山一の連鎖破たんがあり、金融恐慌一歩手前で大変な時期だった。10年先の地球温暖化対策の枠組みを決めるより、当座の危機を凌ぐことの方が焦眉の急だったが、当時の橋本首相は「環境族」の名に恥じないリーダーシップを発揮した。

 「京都議定書」。国際政治の枢要なプレーヤーなら知らない人はいない。この条約史上はじめて日本の都市名を冠した文書は、地球温暖化対策に関する世界のテキストになった。後になっての批判は容易いが、茫洋とした目標だけを定めた「地球環境サミット」「気候変動枠組条約」(92年)からたったの数年間で、温暖化ガスの、先進国・国別排出目標を定めた国際取り決めができると、当時一体誰が予想したろう。それだけで大きな成果だったと私は思う。

 京都議定書は、第1期の約束期間を2008年〜2012年の5年間とし、先進国は少なくとも90年比で▲5%が目標とされた。EU▲8%、米国▲7%、日本▲6%である。その計算に当たっては、森林吸収源やCDM(クリーン開発メカニズム)を認める。途上国の参加は最後まで討議されたが、結局、途上国の反対により、最終的には盛り込まれなかった。

 結果的には、予想以上のレベルでの削減目標で合意できた。当初は、米国は0%を強く主張し、しかも途上国参加が絶対的条件だった。一方、EUは15%を主張し、米国と日本との同等にこだわった。日本の政府部内では、国内、特に通産省と産業界の反対で当初は0%、その後の調整で2.5%、ただし2%分は誤差の許容範囲内という姑息な案すら検討されていた。差し引き、0.5%削減で良いというわけである。

 橋本首相と大木環境庁長官は、しかし、早くから、「それでは議長国としてもたない」という認識に立っていた。国立環境研究所は、ベストシナリオでいけば日本は7.5%の削減が可能という報告書を出していた。これが「積極派」の理論的バックボーンになった。もちろん、通産省総合エネルギー調査会では、2010年はおろか30年になっても0%、すなわち、やっと現状維持という報告書で対抗した。こうした大きなギャップを埋めなければならなかったのである。

 その後、橋本首相の指示で幾度となく関係省庁会議が開かれ、日本の削減目標は4%まで上がった。こういう中で「京都会議」は始まったのである。筋書きのない多国間交渉だった。

 交渉のポイントはやはり米国だった。会議の途中、今やノーベル賞を受賞した地球環境問題の第一人者、ゴア米副大統領(当時)が来日し各国の期待を集めたが、それでも米国は0%だった。ただし、米国にも「柔軟性はある」との発言が注目された。

 その中で議長提案が出た。90年比で先進国全体で▲5%。EU▲8%、米▲5%、日▲4.5%という案である。米国等は強く反発した。ここで担当大臣ではなく橋本首相が、時差があるため深夜、米、英、独、伊等の首脳に直接電話し、議長案の説得に当たった。EUは8%で良いが、米国、日本と2%以上乖離するのを嫌った。EU8%なら、米7%、日6%である。しかし、日本国内では通産省が「5%以上は絶対NO」「ギリギリ5%」と強硬に主張していた。

 ここで、米国が変身した。ゴアの「柔軟性発言」の影響か、森林吸収源が認められたからか、真相は不明だが、米は▲7%を受け入れた。さらに米国は、米国が死活的に重要としていた途上国の参加が担保されるとして、「7.6.5」でなく「8.7.6」の1%上乗せ案を日本に打診してきたのである。結果的にはEUと同じ案だった。あわてたのが日本である。▲6%。当然、通産省は絶対反対だ。しかし、最後は、議長国として、取りまとめの責任を負う国として、橋本首相の裁定で▲6%を受け入れたのである。

 たしかに、実現可能性という観点からは、「どんぶり勘定」のように政治的加算をした決め方に批判はあろう。最後は、代表団の睡眠不足が「京都会議」の決着を促したとも言われた。しかし、百数十ヶ国が参加する多国間交渉、国際会議である。一致点をみたというだけでも、かつ、国別排出目標を具体的に決められたというだけでも良しとしなければならないだろう。少なくとも、昨年末のバリ会議(COP13)で「悪役」のレッテルを貼られた日本とは違う日本がそこにはあったのである。

 
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