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民間の知恵を活用して官邸主導の「真の改革」を
週刊宝島 8/14号
脱「日本病」論客たちの経済再生への提言
 *第31回の提言者は、桐蔭横浜大学教授であり、マスコミでも活躍中の江田憲司氏。元通産官僚であり、橋本内閣時代には、政治・行政担当の総理秘書官として、行政改革・構造改革を推進した経験を持つ。「先の改革」の裏表を知る江田氏が、小泉改革に提言する。

◆改革が景気に効いていない

―小泉内閣の経済政策を、どう評価しておられますか?

 今の停滞した経済を打開するためには、小泉さんの「構造改革なくして、景気回復なし」という理念は間違っていない。

 しかし残念ながら、今までやってこられた「改革」は、景気に効くものとは言えない。

 例えば財政改革では、01年度の予算編成で、5兆円の歳出削減をし、そのうち2兆円を景気対策や新規産業の重点分野に配分して、差し引き3兆円の削減によって国債の新規発行を30兆円に抑えるという方針を出した。実際に成立した予算でも、公共事業やODAの削減、道路特定財源の一部一般財源化で、歳出削減が行なわれた。

 しかし改革の核心である予算の中身の抜本的な見直しは、ほとんど行なわれていない。「重点分野に2兆円」も結局、省庁と族議員の綱引きに負け、看板をかけかえただけのような事業に回ってしまった。これでは景気に効く配分とは言えない。

 公共事業は削減されたものの、土木分野と建設分野の9対1という配分は変わらなかった。今のような不況の際には、建設分野の配分を増やし、老人ホームや保育所を建設すれば、待機児童や待機老人が減り、家具などの調度の需要が増える。こういう他分野への経済波及効果が期待できる「予算の中身を変える」 財政改革はできていない。

 また、医療制度改革も、保険制度が継続的に維持でき、将来不安が解消されるような抜本的なものではない。本人負担や企業負担を大幅に上げて診療報酬を少し下げるという、予算の入れ繰りだけで、3〜4年で問題が出るような施策だ。本来なら、診療の数で報酬が決まる出来高払いの診療報酬制度を見直さなければ意味がないが、医師会の反発が恐いのか、そこには手がつけられていない。

 つまり小泉改革は、予算の帳尻合わせだけで抜本的な構造問題や景気浮揚の対策に切り込めていないのが実態だ。

―それでは、「景気回復のための構造改革」には、どんな取り組みをすべきでしょうか。

 最大の問題であるデフレは、需要不足、供給過剰の状態だから、新しい需要を喚起し、過当競争の分野を適正にする必要がある。まず不良債権処理で金融を正常化し、過当競争の問題3業種を適正化する。その上で、新しい需要喚起策のメインとなるのは、大胆な規制緩和だ。

 例えば、93年に携帯電話機器をレンタル制から売り切り制に規制緩和したことで、携帯電話産業は爆発的に伸び、10兆円の新規需要が出た。こういう大きな規制緩和策を政府が2、3出せば、景気刺激になる。しかし、昨年「総合規制改革会議」から出された提案は、省庁折り込み済みの小さな規制改革案の羅列でしかなかった。これでは需要喚起は難しい。

 最近では同会議が、地域を限定して規制改革をする「規制改革特区」構想を出した。これは、官庁からは「1国2制度」と反発があるようだが、この施策を企業にとって魅力あるものにすれば、経済の活力になるだろう。

 また、抜本的な税制改革も重要だ。今年度末の予算編成では 「経済財政諮問会議」の民間議員が、予算の無駄を省いて財源を作って減税をする提案をした。これも増減税一体論を主張する財務省は反対しているが、今の経済状況ではこの「改革還元型減税」はベターだと思う。

 歳出の中身の見直し、大胆な規制緩和、抜本的な税制改正、こういったことこそ「景気回復のための構造改革」だ。

大胆な規制緩和をし、予算の中身に切り込まなければ、改革と言えない

◆「小泉チーム」ができていない

―小泉総理が抜本的な改革をできないのはなぜでしょうか。

 霞が関の官僚や、族議員の抵抗が大きいのが主な理由だ。特に官僚は、自分の省内の省益しか考えず、既得権益を脅かす改革には抵抗する傾向がある。これに負けて、小泉改革は実態のないものになりつつある。

 この縦割行政の弊害を打ち破るために、橋本政権時代の行革で、官邸機能を強化し、総理のリーダーシップで政策を推進できる仕組みを作ったのだが、それが生かされていない。

 金融・経済をはじめ、小泉さんには苦手分野が多く、大臣経験も少ない。だから、総理の知恵袋となる「経済財政諮問会議」や首相補佐官に、小泉さんの苦手分野に明るい人、民間の学者や財界人を積極的に登用すればよかった。しかし実際には、諮問会議の委員10人中6人が閣僚で、事務局も官僚が大半を占める。首相補佐官も5人任命できるのに1人しか採用していない。

 つまり、小泉さんには改革を進める「小泉チーム」ができていないのだ。そこが、官僚や族議員たちに付け込まれている。

 今、小泉さんの周囲は財務官僚で包囲されているから、財務省の願いである「予算削減」はできるが行政内部に踏み込む改革はできない。族議員にも対抗できていない。これでは、改革をすすめる政治的リーダーシップがあるとは言い難い。

 郵政3事業改革は、巨大国営銀行である郵貯・簡保事業を後回しにし、郵便事業民間参入から行なう。特殊法人は、国民生活に影響の大きい住宅金融公庫をまっ先に廃止する。医療制度改革では、国民負担をまず上げる。この改革では、官庁や族議員と軋櫟を生まないことしかやらず、本当に無駄が大きく国民の怒りが大きい部分には手をつけていないように見える。

―小泉総理は今後、構造改革を進めて景気回復をすることができるでしょうか。

 今のままでは「改革なくして成長なし」という命題とはずれている。だから本当のリーダーシップを持って、大胆な規制緩和、歳出の中身の見直し、抜本的な税制改正などの「真の構造改革」に手を染めて欲しい。
 また構造改革を進めるには、 まず政治改革、官庁改革をして、改革の妨げとなる既得権益の岩盤を打ち砕かなければならない。国家公務員の採用方法を変えたり、天下りを助長する早期退職勧奨制度をやめるなど、省益意識や組織防衛意識をなくす改革も必要になる。また族議員を減らすために、有権者が政策で政治家に投票できる選挙制度を検討する必要もあるだろう。行政や政治にまで切り込んで、真剣に改革と向き合えるか。
 それが、小泉改革が成功するかどうかの試金石になる。

 小泉改革を「官僚や族議員に押し切られ、形だけの改革で終わっている」と指摘する江田氏。小泉政権発足から1年あまり。「改革」に期待した国民も、その中身をしっかり検証する時期がきている。

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