*第31回の提言者は、桐蔭横浜大学教授であり、マスコミでも活躍中の江田憲司氏。元通産官僚であり、橋本内閣時代には、政治・行政担当の総理秘書官として、行政改革・構造改革を推進した経験を持つ。「先の改革」の裏表を知る江田氏が、小泉改革に提言する。
◆改革が景気に効いていない
―小泉内閣の経済政策を、どう評価しておられますか?
今の停滞した経済を打開するためには、小泉さんの「構造改革なくして、景気回復なし」という理念は間違っていない。
しかし残念ながら、今までやってこられた「改革」は、景気に効くものとは言えない。
例えば財政改革では、01年度の予算編成で、5兆円の歳出削減をし、そのうち2兆円を景気対策や新規産業の重点分野に配分して、差し引き3兆円の削減によって国債の新規発行を30兆円に抑えるという方針を出した。実際に成立した予算でも、公共事業やODAの削減、道路特定財源の一部一般財源化で、歳出削減が行なわれた。
しかし改革の核心である予算の中身の抜本的な見直しは、ほとんど行なわれていない。「重点分野に2兆円」も結局、省庁と族議員の綱引きに負け、看板をかけかえただけのような事業に回ってしまった。これでは景気に効く配分とは言えない。
公共事業は削減されたものの、土木分野と建設分野の9対1という配分は変わらなかった。今のような不況の際には、建設分野の配分を増やし、老人ホームや保育所を建設すれば、待機児童や待機老人が減り、家具などの調度の需要が増える。こういう他分野への経済波及効果が期待できる「予算の中身を変える」
財政改革はできていない。
また、医療制度改革も、保険制度が継続的に維持でき、将来不安が解消されるような抜本的なものではない。本人負担や企業負担を大幅に上げて診療報酬を少し下げるという、予算の入れ繰りだけで、3〜4年で問題が出るような施策だ。本来なら、診療の数で報酬が決まる出来高払いの診療報酬制度を見直さなければ意味がないが、医師会の反発が恐いのか、そこには手がつけられていない。
つまり小泉改革は、予算の帳尻合わせだけで抜本的な構造問題や景気浮揚の対策に切り込めていないのが実態だ。
―それでは、「景気回復のための構造改革」には、どんな取り組みをすべきでしょうか。
最大の問題であるデフレは、需要不足、供給過剰の状態だから、新しい需要を喚起し、過当競争の分野を適正にする必要がある。まず不良債権処理で金融を正常化し、過当競争の問題3業種を適正化する。その上で、新しい需要喚起策のメインとなるのは、大胆な規制緩和だ。
例えば、93年に携帯電話機器をレンタル制から売り切り制に規制緩和したことで、携帯電話産業は爆発的に伸び、10兆円の新規需要が出た。こういう大きな規制緩和策を政府が2、3出せば、景気刺激になる。しかし、昨年「総合規制改革会議」から出された提案は、省庁折り込み済みの小さな規制改革案の羅列でしかなかった。これでは需要喚起は難しい。
最近では同会議が、地域を限定して規制改革をする「規制改革特区」構想を出した。これは、官庁からは「1国2制度」と反発があるようだが、この施策を企業にとって魅力あるものにすれば、経済の活力になるだろう。
また、抜本的な税制改革も重要だ。今年度末の予算編成では 「経済財政諮問会議」の民間議員が、予算の無駄を省いて財源を作って減税をする提案をした。これも増減税一体論を主張する財務省は反対しているが、今の経済状況ではこの「改革還元型減税」はベターだと思う。
歳出の中身の見直し、大胆な規制緩和、抜本的な税制改正、こういったことこそ「景気回復のための構造改革」だ。 |