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「大学ランキング」2003年度版
朝日新聞社
政治家出身ランキング
(掲載記事全文)

 「政治家になるためには、どこの大学に行ったらいいですか」「なにを勉強したらいいですか」とよく聞かれます。それに対し、私は決まって「どこでもいいし、どんな勉強でも将来必ず役に立ちますよ。だって、政治って、世の中や人のことすべてを扱う商売ですからね」と答えるようにしています。

 自分がいちばん興味があること、得手だと思うこと、そういう基準で大学や学科を選べば、それが自分の専門職になり、将来政治家になった時に必ずそれが自分の専門領域になり、将来政治家になった時に必ずそれが自分の強みになるからです。山登りにたとえれば、政治家ほど、それになるための登り口やルートがたくさんある商売はないのです。

 国政や国民の側からみても、さまざまなジャンル、分野からの人に政治家になってもらったほうがいいのです。というより「いかにも政治家風の政治家」はいらないのです。よく「選挙に落ちたらタダの人」と落選議員のことを称しますが、「選挙に落ちたらメシが食えない」ような人に政治家になってほしくないのです。政治家じゃなくても「いっぱしの人間」が政治家になってはじめて、余裕を持って国民の目線で国政に打ち込むことができるからです。

 「政治家でいることしか能のない人間」は、政治家という職にへばりつくしかありませんから、特定の利益団体や既得権益にこびへつらい、無理な金集めや票集めをするようになるのです。これが今でいう「抵抗勢力」という政治家たちなのです。

 ただ、そう申し上げたうえで、そうは言っても、結果的に政治家になれそうな職業というものの傾向はあるわけで、それを説明したほうが、政治家になりたい学生さんには有益かもしれません。以下では、政治家の供給源たる職業別に、それに強みを持つ大学にふれていきましょう。
 そういう意味で、政治家養成職業の横綱・大関は、官僚、二世、弁護士、議員秘書、県議、市議、ジャーナリストといったところでしょうか。

〜こんな奴が政治家ならば俺がやってやると思う官僚〜

 官僚といえば圧倒的に東京大学です。中央省庁による公務員採用で東大偏重の是正が叫ばれて久しいですが、今でも一向にこの傾向は変わっていません。官僚、すなわち行政に携わると、この国がどういう仕組みで運営されているか、法律や予算の作り方、具体的な行政領域の専門知識、はては政治と行政との力関係にいたるまで十二分に習得することができます。おまけに、ろくでもない政治家と付き合う機会も多いので、「こんな奴がやっているなら、よし俺がやってやろう」という心意気もわいてきます。そして、晴れて政治家になっても、特段の違和感もなくスムーズに適応できる職業と言えましょう。

 政治家二世といえば、少し強引ですが、慶應義塾大学でしょうか。私が総理秘書官としてお仕えした橋本龍太郎氏もそうですし、現総理の小泉純一郎氏もそうです。もっと若いところでは行革担当大臣の石原伸晃氏。お金にも比較的恵まれ、何よりも選挙基盤がしっかりしているのは、政治家志望の人にとってはうらやましいかぎりです。しかし、これを読んでいる人で二世でない人は、当然この恩恵には浴しません。

 弁護士といえば、東大や京大出身者も多いですが、特色あるのは中央大学です。もともと入学試験を受けようとという時から弁護士志望の学生が多く、弁護士となってからも、さまざまな事件を解決しているうちに矛盾だらけの世の中を正したいという気持ちが高まって、政治家志望となる場合が多いようです。そんなきれいごとばかりでもないですが、私のこれまでの経験では、比較的この弁護士出身の政治家がいちばんまとものように思えます。

〜政治家養成の人気コース、早大雄弁会、松下政経塾〜

 議員秘書、県議、市議などの地方議員出身の政治家には、なぜか日本大学出身者が比較的多いようです。秘書は、仕える政治家に恵まれれば、ある一定の年限一生懸命働けば県議や市議に出馬させてもらえる可能性も高い。逆にそういう志を持った人でないと務まらない過酷な商売が、議員秘書であると言うこともできるでしょう。県議や市議になれば、今の衆議院の小選挙区制度のもとでは、同じような選挙戦術で国会議員になれる可能性があります。極端な選挙区では、県議、市議より狭い区域が選挙区とされる所もあるからです。一時「これでは新人立候補者はすべて地方議員出身者になってしまう」と言われたくらいです。

 どうしても政治家になりたい人は、どこかの議員秘書になり、自分の選挙のつもりで地元を歩くことです。特に都会では、良いか悪いかはべつとして「毎日駅頭立ち」と称して早朝演説をやれば、地方議員当選の確立は高いでしょう。

 ジャーナリストといえば、早稲田大学です。特に、各新聞、通信社、テレビ局の政治部記者ともなれば、日ごろの取材を通じた政治家とのつながりで出馬を誘われる場合も多いようです。ただ、ジャーナリストの場合は、「社会の木鐸」として権力とは一定の距離を置くことが美徳とされていますから、記者出身の政治家は元の職場からは快く思われないようです。

 早稲田大学で有名な雄弁会は、政治家を志す学生たちが多く集うところです。たしかに、このサークルからは、竹下、海部、小渕、森元首相などの有名な政治家が輩出しています。海部元首相には、私も官邸勤務時代、直接お仕えしたことがありますが(しかも総理演説の草稿づくり担当で)、その演説の巧みさは「海部の前に海部なし、海部の後に海部なし」と学生時代言われたそうです。「政治は言葉」ですから、人に感動を与えたり、自分の主義主張をわかりやすく伝える能力が極めて重要になります。そういう意味では、雄弁会出身の政治家の話は確かに面白いし、聴衆を長時間飽きさせることもありません。そういうスキルを磨くには実績のあるパスと言えましょう。ここから、さらに政治家養成塾である松下政経塾に入るコースも人気です。

  以上、あくまでも漠とした山への「登り口」について概観しました。政治家二世を除いて、これといった政治家になるための王道はないと言えましょう。要は、最初に述べたように、どんな領域であろうが、その知識や教養を高め、良い人間関係をつくっていけば、それが何かのきっかけで政治家となる起爆剤となりうるということを忘れないでほしいのです。

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