
小泉政権最大の危機が訪れた。言うまでもなく田中真紀子外相更迭問題だ。マスコミ各社の内閣支持率調査が、軒並み20〜30ポイント近く下がっているように、この問題では、明らかに小泉首相はミスを犯した。
私には、同じ人事上の失敗ということで、橋本内閣当時の佐藤孝行氏入閣問題をほうふつとさせた。あの時も自民党内の力学で、ロッキード事件で有罪となった佐藤氏を入閣させ、60%近くあった支持率が20ポイント近く下がってしまったのだ。それまで「音なしの構え」だった抵抗勢力は、これを機にむくむくと頭をもたげ、それに北海道拓殖銀行や山一証券などの金融連鎖破綻が追い打ちをかけ、改革路線が頓挫した。
折しも、3月危機など経済の更なる悪化がささやかれている今日、小泉政権に二度とこの悪夢の道をたどらせてはならない。マスメディアの建設的な批判精神が望まれるところである。
「真紀子大臣VS外務省」では、外務省に最も問題があることは明白であるにしても、読売新聞がこれまで詳しく報道したように、前外相にも色々落ち度があり、国民も薄々その力不足を感じはじめていた時だった。しかし、本件では、前外相にほとんど非がないにもかかわらず、不明朗な喧嘩両成敗の形で、外相までを更迭した。そこに国民は大きな疑念を感じたのだ。
普通の、一般の国民の方に目線を置いていたからこそ高支持率を維持していたのに、小泉首相も、旧来の権力基盤、党内力学の方に軸足を移したのではないか、小泉改革も、今後こういった手法で妥協を重ねるのではないかと心配しているのだ。この疑念を払拭するためにも、小泉首相は待ったなし、目に見える構造改革の成果を国民に示さなければならない。
その「成果」だが、昨年末、確かに歴代政権では成し得なかった諸改革に端緒をつけ、突破口を開いたことは事実だ。道路公団の民営化や3,000億円の国費投入の廃止、特殊法人への1兆円を超える出資金等の減額、初の診療報酬下げなどである。
しかし重要なことは、歴代政権との比較ではなく、現下の厳しい経済状況を打開するだけの改革であったかどうかという点である。「構造改革なくして景気回復なし」。私の年来の主張でもあるが、それは、その前提に「大胆さとスピード」が伴ってこそはじめて真理となるのである。そうでなければ、改革の負の側面(失業や国民負担増)ばかりが先に国民を襲い、早晩その痛みに堪えかねて改革路線は頓挫してしまうだろう。
この点、今の小泉改革の進捗度は極めて不十分だ。新しい産業や需要を生む活力となる規制改革では、「各省庁とすり合わせた小さな玉」の羅列で終わった。景気により効く予算の中身の改革では、医療福祉、教育、情報通信等の重点7分野に看板を書き換えて、旧来の公共事業がなだれ込んでしまった。金融機関の不良債権処理も、それ自体が自己目的化し、本来の金貸し機能の回復までには至っていない。小泉首相には、歴代政権とは違うという弁明に安住することなく、これらの分野に、再び身を捨てる覚悟で切り込んでほしい。そうでなければ国民の信頼は益々下がり、抵抗勢力の思う壺でとなっていくであろう。 |