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小泉首相は改革の旗印のもとに解散せよ!
月刊「政界」2003年2月号 [19/Dec/02]
江田写真1
「しがらみのない若手議員」が政界再編の波を起こす
 2002年10月の統一補欠選挙で、無所属として出馬、2度目の挑戦で当選を果たした江田憲司衆議院議員に聞いた。いまの時代、政治に何が求められているのか。1年生議員として自分に課した使命とは―。


有権者のすさまじい政党不信

―自民党公認で出馬した2000年6月の衆院選では民主党の中田宏氏(現=横浜市長)が当選し、次点に泣いたわけですが、二度目の挑戦となった統一補欠選挙では「あえて無所属」の旗を掲げて戦い、見事に当選した。前回の衆院選と今回の補選、戦い方はどう違ったのでしょうか。

(江田) 前回の衆院選は、ひと言で言えば古い選挙をしたわけです。自民党の神輿に乗っかるだけの形式的な選挙はできたが、組織選挙で広がりを全く持たなかった。既得権益のしがらみに足を取られてしまい、古い業界団体やガチガチの自民党層の、メンツや年功序列が幅を利かせた人間関係のなかで、「江田憲司」が埋没してしまったんです。私の選挙区である横浜市青葉区、川崎市宮前区にお住まいの方は、無党派で町内会や自治会とも日頃は交流がないような人たちが多い。だから補選では、前回の衆院選とはやり方をガラッと変えました。自民党、民主党の候補は、かつての私と同じ轍を、私以上に踏んでしまっていた。

―神奈川8区はいわゆる「都市型選挙」で、政党公認候補と無所属候補の対決として注目を集めていましたが、具体的には、どのような、選挙戦を展開したのでしょうか。また、組織選挙をせず、無所属で選挙戦を展開したなかで、もっとも強く感じた有権者の声とは、どのようなことだったでしょうか。

(江田) 政策を訴えるのに、一般のご家庭の主婦の方々を中心に、10人や15人、20人といった規模のミニ集会というか、井戸端会議のようなことを昼間、膝を突き合せて、お茶を飲みながら、何度もやらせていただきました。また、江田憲司という名前を一人でも多くの人に知ってもらおうと思い、いろんな方が集まるお祭りや地域のイベントには呼ばれなくても顔を出すようにしました。
 有権者は、ピラミッド型の年功序列の組織ではもう動きません。上から指令を出したって、下の人間はもうそのとおりには動かない。しかも、ピラミッドの外に広がるものも何ひとつない。大事なのは、有権者と草の根的に対話して、江田が車輪の軸である自転車のスポークのように、有権者一人ひとりと直接繋がる関係なんです。個人演説会などは開かず、朝から晩まで街頭演説で駆けずり回りましたが、多くの有権者の方が「自民党には絶対に入らないでね」と言うんです。また「私はこれまで民主党の支持者だったんですが、代表選とその後の人事を見て、大変失望しました。だから、江田さんに投票します」とも言われました。
 神奈川8区は、かつて新自由クラブが発祥した地でもあり、政治への問題意識が高いというか、わけのわからない政党政治の現状を打破してほしいという強い声が聞こえてくるんです。すさまじいばかりの政党不信を痛感しました。



江田写真2 2002年10月27日に行なわれた統一補欠選挙では「あえて無所属」の旗を掲げ、草の根運動を展開した。「よく言えばボランティア選挙、悪く言えば素人選挙。主婦のみなさんや学生さんなどの寄合所帯で、お互いに顔も知らない方々が江田のもとに集まってくれた。口コミの広がりでしたが、それにしても、主婦のみなさんの口コミというのは本当にすごかった」

―しかし、永田町には無所属の1年生議員に何ができるのか、という声もあります。選挙期間中には敵対陣営から「偽装無党派」という声も出ていました。

(江田) 当選できたのは「少しでも党派性のない、身ぎれいな議員を一人でも多く国会に送り出そう」という地元有権者の意思のあらわれだと思います。そして、私自身も現在、無所属がベストだと思っている。自民党、民主党の1回生では組織の歯車のひとつで終わる。いわゆるフリーランサーの立場で政界を駆けずり回ることの方が意義のあることだと考えています。自民党だ、民主党だというのであれば、私は出馬しなかった。色のついていない無所属の立場で、自民党、民主党の議員とも等距離で意見の交換をしていきたいと思っています。

―日本の閉塞感を打ち破るには、「しがらみのない若手議員」中心の政界再編しかないと訴えていますが、その政界再編の波はいつになったらやってくるでしょうか?

(江田) もう大きな時代の流れは政界再編に向かっており、長野や宮城、三重、そして「1区現象」といわれる市長選を見てもわかるように、地方レベルでは、すでに有権者の意識が変化しています。それにプラスして、私をふくむ若手の政治家が決起し、行動すれば政界再編も不可能ではない。「大きな時代の流れ」「有権者の意識の変化」「若手政治家の行動」がともなえば政界再編はできるはずです。だから私は、若手政治家の波をつくるため、一人でも多くの問題意識を共有する人たちと、意見交換をするところから始めているんです。
 好き嫌いはともかく、いまの閉塞感に満ちている政界に喝を入れられる人は、現在のところ、小泉純一郎首相か石原慎太郎東京都知事しかいない。だから、小泉首相が解散総選挙に打って出たときに、若手を中心に波が起こせるかどうかです。小泉さんにはきっかけとして改革の旗印のもとに解散をしてくれればいいと思っています。そこで地殻変動が起こる。いや、起こさなければいけない。石原さんも新党をボーンとつくればインパクトがあり、その反動、反作用でリベラル勢力が結集される。そういった波が来たときに、しっかり波乗りができるよう、準備をしておこうということです。

―そのときの同志の中心となるのが「しがらみのない若手議員」ということになるのでしょうが、その定義はどのようなものなのでしょうか。

(江田) いわゆる既得権益から自由だということです。たとえば自民党なら、高速道路の建設凍結となったときに、推薦を受けた業界団体にも気兼ねすることなく決断できる人、民主党なら労組の反対を押し切ってでも行革をする気概のある人。だから、選挙基盤がある程度、固まっている若手が中心となるでしょう。新米議員として、ごあいさつを兼ねてお話するうちに連帯意識のようなものが生まれる方もいるでしょうし、すでに志を同じくする方の大体の目星もつけています。

―それが塊になることもある、と。

(江田) 超党派の議員連盟や非公式の勉強会など、いろんな活動の場があります。自民党でもない、民主党でもない、本当にしがらみのない国民本位の新しいうねりを生み出す触媒になることが、いまの私に求められていることであり、国会議員として、いますべきことだと思っています。



江田写真3 東京・永田町の衆議院第2会館711号室、江田憲司事務所にて取材。以前は議員辞職した加藤紘一氏の事務所があった部屋だ。「辻元清美さんともう一つから選択できたんですが、迷わず、ここを選ばせていただいたんです。一時は政界再編の旗手だった方ですし、加藤の乱を突き抜けていれば、とか、そういう思いを込めて。結果として、ああいうかたちになってはダメですけどね」
小泉改革は中身がともなっていない

―いまの永田町が抱える最大の問題点はどういうことなのでしょうか。

(江田) 数だけの党利党略の政権奪取ゲームは90年代からやっていましたが、政界再編がことごとく失敗したのは再編軸がなかったからです。非自民の細川内閣にしても、結局は自民系から社会までの連立。私が首相秘書官としてかかわった橋本政権も自社さの連立政権でした。いまもごった煮ですからね。土井たか子さんと小沢一郎さんが同じ選挙カーに乗って、同じ候補を応援するなどということに国民はうんざりしているはずです。新保守対リベラルでも、大きな政府対小さな政府でも、タカ対ハトでもいいから、とにかく背骨がしっかり通った2大政党制への政界再編が必要です。

―政界再編のチャンスは、いままでもことごとく逃しているように思われます。

(江田) 本当に残念だったのは、民主党結成にともなう、旧さきがけの瓦解でしょう。鳩山由紀夫さんは最初、船田元さんと鳩船新党をつくろうとしたが、ケンカ別れして、社会党系の人とくっついて、民主党をつくった。もう少し辛抱できなかったのか。比較的しがらみのない、良質な議員が集まっていただけに残念です。

―その民主党も、政権奪取どころか所属議員の足並みが乱れっぱなしです。

(江田) 政党の体を成していない状態です。鳩山さんは代表選で勝ったあとの幹事長人事、新党騒動をふくめて、独断専行とカラ回りばかりが目立った。労組依存という古い体質も露呈してしまった。野党第一党とはいえ、結局は人数を集めただけのごった煮で、自民党との違いもわからず、うちわもめばかりが目立つ。相当な閉塞感と憤懣やるかたないという気持ちを抱いた民主党の若い議員が、これからどう動くのか、期待しながら、注意深く見守らなければならないと思います。。

―他の政党はどうでしょうか。

(江田) 社民党はもう終わった政党ですし、自由党は小沢私党だと思っています。党内民主主義があるのか、よくわからないところがある。いずれにせよ、自民、民主、自由あたりでもう一度リシャッフルする必要があるでしょう。とくに外交安全保障という、国を守り、国民の生命と財産を守る基本的な政策について一致できる政党をつくらなければならない。

―小泉首相には「きっかけとして改革の旗印のもとに解散をしてくれればいい」という期待しかできないのでしょうか。

(江田) 改革に懸ける意気込みはいいが、中身がともなっていないんです。デフレ政策も迷走しています。支持したはずの竹中案が党の反発ですぐに後退する。経済財政諮問会議で民間議員の提言を認める発言をしたかと思えば、財務省幹部にご進講されて、翌日には全く別の言葉を口にする。小泉さんに問われているものが、リーダーシップとクレディビリティ(=信用性)であるにもかかわらず、すべてが中途半端。軸がないことは、とくに外国の投資家などの目には率直に反映されています。だから、株も経済も金融も浮上しない。現在約60%ある支持率も、次の総裁選までにはジリジリと下がるのではないでしょうか。
 私も橋本内閣で構造改革を打ち出してきたわけですから「改革なくして成長なし」のスローガン自体は支持します。しかし、もはや小泉さんは、改革の旗を半分降ろしている。どっちつかずだから、ダメなんです。小渕政権はばらまき型でしたが、企業や投資家の予測可能性はあったから、それなりの業務計画や戦略、戦術が立てられた。いくら支持率が高くても、金融経済はクレディビリティが大事ですから好転はしません。
 また、小泉首相は、自分の得手分野であるはずの医療や年金の問題にさえ、
リーダーシップがない。医療制度、年金制度ともにパンク寸前であり、とにかく抜本改革をするべきなのに、いまだ小手先だけの帳尻合わせをしている。
厚生大臣経験者の小泉さんが、少子高齢化社会で医療費、年金の負担が莫大になることを知らないわけがない。何に気兼ねしているのか知らないが、坂口厚生労働大臣に丸投げしているのは、極めて不可解です。



自民党政治が続けぱ日本は破綻する

―しかし、不信任案を提出したところで、ポスト小泉の顔は見えてきません。
やはり最右翼は石原慎太郎氏になってしまうのでしょうか。

(江田) 一番悩ましい問題です。ただ、殺してはならないと思うカードといえば、民主党代表選では一敗地にまみれてしまったものの、まだ国民的な人気が高い菅直人さんでしょうね。代表選後、あえて一兵卒を選ばれたのはいいことだと思いますし、ここでいま一度、さきがけの原点を見つめなおしていただいて、一からスタートされることを期待します。
 加藤紘一さんも次の選挙では、確実に国政に戻ってこられるでしょう。しかし、もはや加藤さんでは、政界再編のキーパーソンにはなり得ない。以前は小泉さんがぶっこわして、加藤さんにつなぐという方法もあったとは思いますが、その選択肢はもうなくなってしまった。

―ポスト小泉も決まらないまま日本は深刻な事態を迎えることになりそうですし、江田議員の神奈川8区でも補選の投票率は33.66%という低さでした。有権者の政治離れには、ますます拍車がかかっているように思えます。

(江田) このまま自民党政治が続けば、日本は遅かれ早かれ破綻します。いま、若者があくせく働き、10万円の給料をもらったとして、税金や年金で引かれる額が3万8000円。それが現実問題として4万円、5万円、6万円になっていく。この数年で対策を打たなければ日本は沈滞した国になり、われわれは東アジアの片隅でひっそりと暮らしていかざるを得なくなる。
 若い人が「年金なんて65歳にならなければもらえないものだから関係ない」「入院なんてしないから医療保険なんて関係ない」などと言っていたら、どんどん、税金や保険料が給料から天引きされていく。
 だから、「政治家なんて誰がなっても同じ」なんて言わないで、政治に参加する必要がある。でなければ自業自得で、そのツケは自分たちを直撃することになるんです。

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