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「首相官邸主導」がどんどん骨抜きにされている
ガバナンス 6月号
 橋本龍太郎政権の時に内閣機能の強化や中央省庁の再編を決定した。この中で首相官邸主導の政治を目指すための枠組み作りは100点満点の出来だった。ただし、省庁の再編に関しては政治的妥協を余儀なくされたので、全体としては60点ぐらいの出来になってしまった。
 ところがその後、官邸主導という一番重要な面が、どんどん骨抜きにされていき、今は30〜40点ぐらいに下がってしまった。



つまみ食い的なポリティカル・アポインティ
 政治主導を進めるという意味でポリティカル・アポインティ(政治任用)のポストを増やしたものの、今の首相官邸を見た場合、同制度は活かされていない。米国型の有機的な政治主導の体制になっていない。
 経済財政諮問会議にしても、首相補佐官制度にしても、悪い言い方をすれば、都合のいい時に「つまみ食い」的に利用しているだけだ。いかに、いい器を作っても、それを運用する人の意識が重要だということだ。それは、首相が経済財政諮問会議や補佐官制度をいかに使い切るかということにかかっている。
 小泉純一郎政権が発足した後の2001年6月、経済財政運営に関する「骨太の方針」が公表された。この時は「やっと道具(経済財政諮問会議)を使いこなせる首相が現れたな」と思ったものだが、残念ながらそれ以降は竜頭蛇尾に終わっている。
 最初、小泉首相は「自民党をぶっ壊す」と主張。自分の知恵袋である経済財政諮問会議やポリティカル・アポインティ制度を利用して、既得権益や政官業の癒着を打破するという意気込みがあったように見えた。
 しかし、その後、首相は抵抗勢力や既得権益層と折り合いをつけながら政権運営をしていこうというふうに変わった。それに平仄を合わせるように政治主導、内閣主導がだんだん勢いを失ってしまった。
 内閣支持率が80%から40%に下がり「普通の首相」になった結果、首相官邸から与党にパワーシフトが起きたということだろう。

経済財政諮問会議も従来の審議会並みに
 税制改革ひとつをとっても、経済財政諮問会議の民間議員が何か提案しても、それが一向に顧られないという事態になっている。景気対策、金融対策、証券税制もしかりだ。
 経済財政諮問会議については米国ホワイトハウスのCEA(経済諮問委員会)をモデルとして考えた。CEAでは閣僚級の委員長の下にマクロ、ミクロ、国際経済の専門民間学者が配置され、経済運営や予算の基本方針などを企画立案している。
 経済財政諮問会議もそうあるべきだと考えていたが、いつの間にか10議員のうち6人を閣僚が占め、民間人は4人しかいない、という事態になってしまった。
 閣僚が多いということは、バックで官僚が操作しているということだ。多忙な閣僚が多いことから十分な討議時間は確保できない。いきおい官僚が考えた作文を追認するだけの機関になってしまう。
 さらに諮問会議の性格も「企画立案実行機関」から従来の「審議会」並みに格下げされてしまった。
 そのうえ事務局員150人のうち9割は旧経企庁、旧通産省、旧大蔵省の出身者で占めている。これではダメで、半分は学者やシンクタンクの研究者、あるいはマスコミ出身者など民間人にすべきだ。そのためには経団連などに、優秀な人材を提供してくれるよう早くから要請しておくべきだったのに、それをしてこなかったために人材が集まらなかったということだろう

10程度の戦略会議をつくり首相補佐官の活用を
 一方、5人まで置けるはずの首相補佐官も今は3人しかいない。3人と言っても、うち1人は内閣府副大臣との兼務だから、実態としては2.5人でしかない。
 霞が関の官僚たちは、霞が関の流儀からはずれて仕事をするような人(補佐官)は目の上のたんこぶであり、アウトローとして排除しようとする。だから首相補佐官を置くことに、とにかく反対する。
しかし、ポリティカル・アポインティ制度は活用すべきであり、望ましい方法としては、
  (1) 外交、安全保障、景気対策、税制、教育、医療・年金、行革、ITなどの重要政策に関して10ぐらいの省庁横断的な戦略会議を作る
  (2) 代わりに現在、首相官邸にある有象無象の推進本部や対策本部などは整理する
  (3) 事務局長には首相補佐官を当て、首相の意向を直接忖度しながら事務局を運営していく
  (4) 事務局長兼首相補佐官には若手政治家か民間人を起用し、官僚は排除する
  (5) 事務局長兼補佐官には、米国の大統領補佐官のように民間人や官僚から登用した専任のスタッフをつける

 ・・・といった制度を立ち上げるべきだろう。

官房副長官補や副大臣・大臣政務官制度にも改善の余地
 さらに問題なのは内閣官房副長官補だ。内閣機能を強化するという意味から、従来の内政審議室長や外政審議室長、安全保障室長を特別職に格上げした。
 しかし、そこに起用する人物については「出身省庁を固定化せずに弾力化する」とし、さらには「ゆめゆめ官僚は充てないぞ」ということになっていた。ところが実際は従来の各室長が横滑りしただけだった。これも官僚ではないフリーの立場の人間を充てるようにすべきである。
 政治主導体制を確立するために導入された副大臣・大臣政務官制度にも改善の余地がある。副大臣・政務官とも、閣僚が意の通じた政治家を選び、チームを組むようにすべきだ。
 そうしない限り、各省庁における政治主導の実現には無理がある。今のままでは、副大臣・政務官とも、相変わらず盲腸みたいに扱われるだけである。


■聞いて「ひとこと」■
橋本政権時代、中央省庁改革作業の“現場”を見てきた人だけに、現状分析は厳しく、それを改善するための提言も具体的である。
 小泉首相に対しては「郵政3事業に関して橋本政権が郵政公社化を打ち出したところ、厚相だった小泉氏は『民営化じゃないとダメだ。俺は厚相を辞める』と大変な剣幕だった。ところが今は公社化とほんの一部の民営化で『一歩前進だ』『やった、やった』と言っている。自分の金看板さえ守れなかった。小泉政権は末期症状だ」と強く批判した。
 議員として当面は無所属で通し、政界再編を目指すという。企業・団体献金は受け取らず、清潔な政治を貫く覚悟だ。意気やよし、である。


聞き手/仮野忠男 政治ジャーナリスト(前毎日新聞論説委員)


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