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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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原発賠償スキームの決定・・・ルール無視の東電救済

2011年5月16日  tag:

 先週、原発災害の賠償スキームが決まった。新たに賠償のための機構を立ち上げ、東電や他電力からの負担金と国からの資金援助(交付国債+融資への政府保証)で、東電の賠償責任を果たしていくという仕組みだ。

 一応、東電は、すべてのステークホルダー(利害関係者)から(賠償で)得られる協力を政府へ報告するよう求められたが、お題目程度のことだ。結局、東電はそのまま生き残り(上場維持で事業形態存続)、株主や金融債権者(メガバンク)の責任は問われない。そして、最後は、電気料金値上げや借金(国債)という形で国民が尻拭いをさせられる可能性が大だ。

 市場関係者や海外からは、早速、市場のルールを無視した「究極のモラルハザード案」「まったく理解できない」との声が上がっているという。

 しかも、このスキームは、これほど重要な決定にもかかわらず、閣議決定ではなく関係閣僚会議で決定された。その覚悟のなさは、その後の政府要人の発言のブレが証明している。本件については、まだまだ、最終決定までの道のりは遠いし、予断は許されないと言えよう。

 それもそのはず、今、政府部内でささやかれているのは、とりあえず、東電の決算を5月20日ごろまでに確定しなければならず、そのための監査証明を得るためには、東電を破たんさせない、存続させるという政府のお墨付きが必要、との姑息な魂胆が背景にあるという。

 したがって、6月の東電の株主総会さえ乗り越えれば、この賠償スキームもお蔵入り、少なくとも法案決定は先送り、といったこともあるらしい。まさに、この政権の、被災民そっちのけの、その場しのぎの場当たり的対応の極致であろう。

 この政府提案は、原案を某メガバンクが作成、それに監督官庁の経済産業省と予算担当の財務省が脚色したと言われているように、被害者や国民の利益より、東電及びその利害関係者の利益を最優先に考えられたものだ。まさに「東電救済案」と揶揄される所以だろう。

 さて、ならば、こうした問題への対処はどう考えるべきか。それは、原点というか、原理原則に立ち返れば良いのだ。守るべきものは、被災者への必要かつ十分な賠償と電力の安定供給(東電救済ではない!)だ。そして、その責任は事故を起こした東電に一義的にあり、それで足りない分は、これまで原発を国策として推進してきた国が責任を負う。これが基本的考え方だ。

 その上で、東電自らが賠償金全部は「支払えない」と公言している以上、東電は債務超過になることを自白しているようなものだから、何らかの破たん処理に入るというのが筋であろう。そして、債権者間の優先・劣後の関係の中で損失を負担していく。それが金融市場の原則なのだ。

 その際、賠償責任を負う順番は、東電、株主、金融債権者、国ということになる。
 (次週に続く)

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