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シリーズ⑧/「日本には『大義なきイラク戦争』への総括がない」・・・賛成・支持した政治家に安保を語る資格はあるか?!

2015年11月23日  tag:

(注:開戦当時の記述です/拙著「小泉政治の正体」/PHP2004年11月刊より。パリの同時多発テロで亡くなられた全ての方々、そのご家族に心から哀悼の意を表します。)

 2004年4月、イラクで日本人が武装勢力に拘束される事件が起こった。そして、人質解放の条件が、「イラクからの自衛隊の撤退」だった。

 この事件発生以来、小泉首相は、毅然として「テロには屈しない」、「撤退はしない」という方針を貫いた。確かに人質家族の悲痛な叫びを聞けば心が痛むし、「人命は重い」。ましてや、大義なき戦争、憲法違反の疑いのある自衛隊派遣が招いた結果であればなお更だ。

 しかし、これが国際的な常識なのである。私も、首相秘書官の時、「ペルー人質事件」に遭遇して、同じような経験をした。テロリストの要求に屈して、身代金を払ったり、収監されているテロリスト仲間を釈放したりすることは、まさにテロリストの思う壺、その値段をつり上げ、英雄にすることで、更なるテロ誘発の要因となる。日本はその程度の国だと甘く見られて、更なる日本人対象のテロを生むことにもなる。

 日本には「ダッカ事件」という苦い経験がある。日本赤軍と思われるメンバーが日航機をハイジャックし、バングラデッシュのダッカ空港に着陸させ、乗員・乗客151人の人質と交換に、日本赤軍メンバーなどの釈放を要求した事件である。当時、福田首相は「人命は地球よりも重い」としてテロリスト達の要求を呑み、「超法規的措置」により、釈放犯6人、現金600万ドル(当時約16億円)との交換で、人質を解放した。世界から「日本はテロに屈した」というレッテルを貼られた瞬間だった。

 このような対応は、欧米では絶対に許されない。そのために、テロリストとの交渉はおろか、連絡さえとらない主義の国もある。ましてや、強行突破で仮に犠牲者が出ても、首相の引責辞任など論外で、世界の嘲笑を浴びることになる。

 この政権最大の試練とされた事件は、幸い、人質が全員無事解放されることで、事なきを得た。政治は「結果責任」だから、そのこと自体は、小泉首相を評価すべきであろう。ただ、この事件が我々に教えてくれるものは多かった。

 その一つが、米軍は、イラク人にとっては解放軍ではなく占領軍であること、自衛隊も、いくら人道復興支援と称しても、その米軍の占領統治に協力する軍隊だと見られているということだった。そして、イラク聖職家協会がいみじくも線引きの基準を示したように、人質を解放するか否かは、この米軍の側に立っているか否かによる。言いかえれば、米軍への協力者は、拘束・殺害されてもやむを得ないということだ。

 ただ、この基準が通用するのは、あくまでも、スンニ派のレジスタンスグループ内だけで、仮に、この事件が、アルカイーダ系やシーア派過激派のサドル氏一派により引き起こされたものであったなら、異なった結果となっていたことだろう。そうでなかったことが、不幸中の幸いだったと考えなければならない。

(注:開戦当時の記述です/拙著「小泉政治の正体」/PHP2004年11月刊より)

シリーズ⑦/日本には「大義なきイラク戦争」への総括がない・・・賛成・支持した政治家に安保を語る資格はあるか?
シリーズ⑨/「日本には『大義なきイラク戦争』への総括がない」・・・賛成・支持した政治家に安保を語る資格はあるか?!