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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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ODA行政の一元化を!・・・戦略的外交の展開

2005年11月28日  tag:

 政府系金融機関の見直しに伴い、「瓢箪から駒」で、ODA(経済協力)行政の一元化が俎上に上ってきた。国際協力銀行を廃止し、その円借款業務を、技術協力を担うJICA(国際協力機構)と統合した上で首相官邸直属とし、ODA庁として一元化する構想が検討されているからだ。

 この案は、旧通産省経済協力室長として、政府の中で実際に仕事をした経験のある私の年来の主張でもある。中央省庁の再編の際も検討されたが出来なかったことで、是非実現して欲しい。経済協力の世界は、「経済外交」というより、生々しい「国際政治」の舞台であり、日本の国益に沿い、その戦略的運用を図っていく必要があると考るからだ。

 現在のODA実施体制は、有償資金協力(円借款)の世界では、外務、財務、経済産業の三省庁体制、無償資金協力(資金贈与)の世界は外務専管、技術協力の世界は、外務と当該技術分野を所管する官庁の全て(例えば、農業技術なら農水、医療技術なら厚生労働)という体制となっており、極めて第三者からわかりにくい、多くの官庁が係わる複雑なものとなっている。そして、そこで行われているODA行政は、貴重な税金を投入しているにも係わらず、縦割りで司令塔がないため、極めて非効率で戦略的発想がないということに尽きる。

 例えば、円借款では、三省庁がからみ、全ての合意の上で供与されているため、新しい分野への供与方針がなかなか迅速に決まらない。従来の実績、積み上げ主義で、公共事業の配分が十年一日の如く変わらないのと同じ様な状況が続いている。
 全体を、リシャッフル(再編)する、見直すというムーブメントもなかなか起きない。無償(贈与)の世界は、逆に外務省のみが取り仕切っているので実態がよくわからない。従って、時々、無償援助をめぐる不透明な実態が表沙汰になることもある。技術協力に至っては、各現業所管省庁が、JICA(国際協力機構)という出先を使って、自分の予算でまちまちにやっているため、とても、日本全体のインタレストに基づいて、協力施策を整合的に行っているとは言い難い。

 経済協力は、軍事的貢献のできない我が国にとって、唯一の外交的武器と言ってもよい手段である。これが、このような、非体系的、非整合的なやり方で、統一的目的意識もなく行われていて良いはずがない。税金の無駄遣いという観点からも厳重なチェックが必要であろう。

 従って、私は、有償、無償、技術協力、全てを一体的に所管し、その総合的体系的遂行を図るODA(経済協力)庁の設置を提唱してきた。そして、その設置根拠と戦略的実施のための法律として「経済協力基本法」の制定を行う。一元化に伴う、民主主義的なチェック法として、一年に一回、国会に経済協力の実績を報告し、その「事後」承認を受けなければならないこととする。

 「事前」でないのは、経済協力の機動的実施を確保するためだ。これまで、日本の国際貢献は常に遅いと言われてきた。湾岸戦争時の「トウーリトル、トウーレイト(Too little Too late)」がその典型だ。国会は、細かい一件毎の案件を審査するのでなく、日本の国益、世界の現況に照らして、経済協力の重点の置き方、国毎のバランス、供与手法の適正性等のみを大局的に審査する。

 経済協力は「餅は餅屋」というところも確かにある分野ではあるが、我が国の経済協力施策を戦略的整合的に行っていけるメリットと比べれば、それは、ネグリジブルな(無視し得る)デメリットと言わなければならない。

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