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昭和天皇の大御心・・・A級戦犯合祀に不快感

2006年7月24日  tag:

 昭和天皇がなぜ75年を最後に靖国参拝をされなくなったのか、その理由が明らかになった。やはり、従来言われていたとおり「A級戦犯合祀」がその理由だった。この「大御心」の意味するところは大きい。

 日経新聞によるスクープ(7/20付)だが、ただ、これには別途問題がある。なぜ、こうした私的なメモが明らかになったのか。

 通常、天皇陛下とのやり取りは、それが公的な場でのものであっても、聞いた人は公にしないというのが原則であり礼儀でもある。例えば、首相や閣僚は「内奏」という形で、陛下へ国政等のご進講をするが、陛下からのご下問や感想、意見等は絶対にマスコミ等にしゃべってはいけないことになっている。
 現に73年には、その内奏での陛下のご発言を引き合いに出して辞任に追い込まれた防衛庁長官の例があるし、同時多発テロの時は、あの真紀子外務大臣が、内奏での陛下のご発言に言及したしないで、一時、与党内に更迭論が浮上したこともあった。いずれも、政治的権能をもたない「象徴天皇制」の下で、天皇を政治利用してはいけないという考えによる。

 また、これも一般の人にはあまり知られていないが、陛下へこちらの方から話しかけてもいけない。例えば、園遊会のような場合、陛下があらかじめ決められた招待客に「お声」をかけられるが、それまでは「陛下、お元気ですか?」などと言ってはいけない。あくまでお声をかけられた時のその受け答えだけが許されているのだ。ただ最近は、時々、こうした「しきたり」を知らず、あるいは無視して、思わずこちらから声をかけてしまう非礼の輩もいるようだ。

 ましてや、今回の場合は極めて私的な会話を記録した私的メモである。公表も、もちろんまったく前提とされていない。昭和天皇も、当の富田宮内庁長官(当時)も、ご存命ならば大きく眉をひそめられたであろう。

 斯くのごとく、天皇の政治的利用は厳に慎まなければならない。しかし、一方、出てしまったことは出てしまったことである。その事実は事実だけに看過できない。先の大戦の、まさに当事者中の当事者である昭和天皇の戦争観や、A級戦犯、その合祀への思いは、明らかになった以上重く受け止めなければならない。

 自民党、民主党かかわらず、最近、若い世代ほど右傾化し、中には極東軍事裁判の非をあげつらうばかり先の大戦をすべて正当化し、戦争指導者さえ犯罪者とは認めず(小泉首相は認めている)、靖国神社への天皇ご親拝を主張する議員も少なからずいる。こういう人たちには、是非、昭和天皇の思いを真摯に受け止めてほしい。

 私の立場は元々はっきりしている。「首相の靖国参拝是か非か?」(「今週の直言[27/Jun/05])で述べたとおりだ。極東軍事裁判に問題があることも事実だから、あえて「A級戦犯」という言葉は使わない。中国や韓国に言われる筋合いでもない。しかし、我々日本人自身が自身の問題として先の大戦を総括すべきなのだ。そして、300万人以上の同胞を死に至らしめ、一時我が国を国家存亡の危機に追いやった戦争指導者の責任は強く弾劾されるべきでろう。そうした人たちが祀られた所に、国民の象徴たる天皇陛下が控えられているように、国民の代表者たる内閣総理大臣が参拝してはいけない。

 小泉首相はこれまで国会答弁等で「なぜ参拝してはいけないのか全く理解できない」としてきた。さすがにこういう言い方はもうしないだろう。首相の靖国参拝を支持してきた安倍官房長官は今後どう対応するのか。自民党総裁選にも影響必至だ。

 もとより、戦没者への追悼・慰霊は、今、この時を生きる者としての、それにより平和を享受している者としての責務である。靖国神社からのA級戦犯分祀ができればいいが、それが叶わないのであれば、無名戦士の墓としての性格を持ち、内外の遺骨が埋葬され、特定の宗教にとらわれず、首相や閣僚も拝礼や慰霊に訪れている「千鳥ヶ淵墓苑」の拡充策が現実的ではないか。

(参考)富田宮内庁長官メモ(88年4月28日付)

昭和天皇が以下のように述べられたと記されている。
 「私は 或(あ)る時に、A級(戦犯)が合祀され その上 松岡、白取(原文のまま)までもが、筑波は慎重に対処してくれたと聞いたが 松平の子の今の宮司がどう考えたのか 易々(やすやす)と 松平は平和に強い考(え)があったと思うのに 親の心子知らずと思っている だから私(は)あれ以来参拝していない それが私の心だ」

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