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げに恐ろしきや!道路官僚・道路族・・・猪瀬氏はどう答えるか

2008年2月18日  tag:

 私と猪瀬直樹氏は、06年2月のことだから、今からちょうど二年前の毎日新聞紙上で「闘論:道路公団改革の成果」と題して、小泉首相(当時)の「無駄な道路は造らない」との方針で進められた道路改革の今後の行く末について議論した。(参照記事)

 残念ながらその時、私が予想したことがことごとく当たってしまった。国土交通省と道路族「げに恐ろしきや」、福田政権は、10年間、暫定税率を維持したまま、59兆円かけて、9342キロはおろか14000キロの道路を整備する法案、政策を打ち出したからである。

 その「闘論」では、まず、その年の2月7日に出された国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)の答申が、それまでの理解と異なり、9342キロの全線建設を認めたのではないか、をめぐって議論となった。

 猪瀬氏は紙上で「国幹会議では、『抜本的見直し区間』に指定されていた第2名神高速道路の2区間について、いろいろ条件を付けてはいるが、少子高齢化で今後の交通量は増えないから、単純に言うと、永久に着工しないだろう。だから、整備計画9342キロを全部建設するかのような批判は、客観的事実として違う」と主張した。

 これに対して私は「悪い予想が当たった。道路公団の民営化法案が決まった時から分かっていたが、国幹会議の結論は9342キロの高速道路を計画通り全部造るということだ。道路族議員は公団の経営形態という「名」を捨て、利権である道路整備の確保という「実」を取った」と反論した。猪瀬氏は「着工しないという国幹会議の文言は小泉政権後も拘束力を持つ」と抗弁したが、官僚の世界に長くいた私からすると、この文言は「いずれ着工する」という宣言にしか読めなかった。

 なぜなら「道路族は、道路整備を進める二つの『打ち出の小づち』を手にした。一つは採算が合わなくても『必要な道路』として国が税金を直接投入する「新直轄方式」。もう一つは民営化した会社に「採算性があるよ」と言いながら、実際は採算の合わない道路を造らせる」(紙上)からだ。

 かくして猪瀬氏に限らず、当時の石原伸晃国土交通大臣も記者会見で「9342キロ全部造るわけがありません。私が、大臣が言ってるんだから正しいんです」と力んでみせたのも、むなしい結末になった。

 さらに猪瀬氏は「そもそも整備計画は99年以降、延びていない。もし小泉首相が道路公団民営化を提起しなかったら、今ごろはたぶん9900キロぐらいに増えて、通行料金も上がっていただろう」と述べた。これもはかない願望の類でしかなく、今回、結局、9342キロの計画は、最終的には14000キロまで延びた。

 また、今後の課題でもあるが、猪瀬氏は「40兆円の借金を45年で返済すると法律に明記したことも重要だ。国鉄民営化と違い、債務処理に税金は使わない。各社の返済状況はガラス張りで公開する。私は40年でも十分返せると考えているので、返済が進めば、通行料収入の余剰分をどんどん値下げに回せばいい」と楽観的な見通しを述べている。

 これに対して私は、「(道路)会社に建設拒否権があるといっても、最終的に決めるのは国土交通省の審議会。自主的な経営などありえない。今まで採算性のない道路を政治的に造ってきたが、これからも続く。40兆円の債務を45年で返すのは夢のまた夢で、45年後のことは族議員も官僚も責任を取らない。通行料引き下げやファミリー企業の問題点を浮き彫りにしたことなど、猪瀬直樹さんも民間人でよく頑張ったが、それは枝葉の部分で、幹の部分は腐っている。60点が合格点とすれば、今回の改革は20~30点だ」と抗弁した。残念ながら、今の道路整備の方針からすると、この予想も当たってしまうだろう。

 最後に猪瀬氏は「この改革は小泉首相がぶれず、政権が長く続いたからできた。私自身、よくここまでやったなと感じる。最後は、官製談合事件で道路公団副総裁の逮捕まで追い詰めたので、80点だ」と自らを評している。

 私も、紙上でも述べたように、猪瀬氏が民間人でありながら孤軍奮闘、道路族や道路官僚と渡り合って「通行料引き下げやファミリー企業の問題点を浮き彫りにした」功績は高く評価している。したがって、この論稿をあえて書いているのは、その猪瀬氏を批判するためではなく、その猪瀬氏にしてからが騙される官僚の、族議員の「したたかさ」について、国民の皆さんに知ってもらいたいがためである。

 要は、このような強固な利権がからむ問題では、猪瀬さんのような民間人一人が逆立ちをしてもできる話ではなく、総理自らが国民のために「身を捨てる覚悟」でやらないと不可能なのである。「郵政民営化」に至る経緯でそれが証明されたと思うが、残念ながら、当の小泉首相に当時、この問題でそれだけの気迫とやる気がなかった。

 最後に、私は紙上で「小泉構造改革の路線は支持するが、中身が不十分。道路公団改革は組織いじりで終わったのが残念だ。次の政権は小泉さんが手をつけた改革に、魂を入れていく作業が必要だ」と締めくくったが、「魂」どころか完全に「逆行」した政治が今ここにある。道路公団改革が決着した時、道路族のドンがほくそ笑む顔が何回もテレビで放映されたが、残念ながら、その笑顔の意味するところが今、結実してしまった。


※「シリーズ/地球環境問題を考える」は今週はお休みします。

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