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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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シリーズ「有言不実行内閣」...(2)人勧を超える人件費削減

2010年10月25日  tag:

 9月に行われた民主党代表選で、菅総理は、国家公務員の「人事院勧告を超えた人件費削減」を公約した。ちなみに、今年の人勧は8月10日に出され、平均年間給与を1.5%下げる内容だった。それを上回る削減を明確に約束したのだ。

 しかし、この約束も案の定、見事に反故にされた。この平均年収で9万4千円、全体でもたった790億円しか削減しない人勧ですら鵜呑みにするというのだ。これが、民主党の支援母体、官公労等の公務員労組の意向に沿ったものであることは明らかであり。私が口を酸っぱくして言ってきた「民主党の構造的欠陥」を、この件でも見事に露呈させたと言えよう。

 これがペーペーの国会議員の公約ならまだわかる。しかし、曲がりなりにも現役総理として、種々困難な事情があることも十分わかった上での公約ではなかったのか。それを前提に代表選の投票行動を、議員も党員も決めたのではないか。それをまさに恥も外聞もなく簡単に打ち捨てた。何が「有言実行内閣」だ。冒頭から、それが虚言だったことを自ら自白したに等しい。

 これでは、国家公務員の人件費2割削減、すなわち、5.3兆円の2割、1.1兆円の削減など「夢のまた夢」だ。今年の予算でも昨年の人勧を鵜呑みにして、たった1404億円の削減だった。これで二年間でたったの2200億円、1.1兆円の1/5の削減でしかない。

 実は、この人勧の前提となる民間給与調査自体にも問題があるのだ。端的に言えば、人勧調査は、平均的な企業ではなく恵まれた優良企業をベースとしている。すなわち、従業員数50人以上の企業に限り、しかも500人以上に偏った調査なのだ。

 つまり、こういうことだ。500人以上の企業については、全国の8割程度の4000社程度を調査しているにもかかわらず、それ以下の50~500人規模では、全国の2割程度の5900社程度の調査に止まっている。その結果、人勧調査による民間給与は高めに出てくる仕組みになっているのだ。

 ちなみに、50人未満の企業も対象にする国税庁の「平成21年民間給与実態調査」(9月28日発表)では、人勧の▲1.5%に比し、▲5.5%になっている。最新データである08 年分で比較すると、人勧調査による民間給与(除くボーナス)が465万円。国税庁調査では365万円と100万円もの開きがある。しかも、03年から08年の6年間を見ると、人勧では17万円増えているのに、国税庁調査では逆に9万円も減っている。ここに、人勧が世間の感覚とかけ離れている大きな要因があるのだ(この辺の数値については「政策工房」に負った)。

 公平のために、調査対象を50人以上とする理由について、政府の言い分を紹介しておくと、「これによって、公務と同種・同等の者同士による月例給比較が可能であり、精緻な実地調査による調査の精確性を維持できる範囲で、民間企業の従業員の給与を広く把握し反映させることができ、民間企業の常雇従業員の六割強をカバーできるということに基づく」からだそうだ。

 鈴木善幸内閣は1982年、4.58%の引上げ勧告を、財政難を理由に見送った。片山総務大臣は鳥取県知事時代に、県の人事委員会勧告を上回る給与引き下げを行った。人勧は、確かに公務員に労働基本権がない、その代償措置としての性格もあるから、尊重できるに越したことはない。しかし、民間企業であれば、経営が悪化し倒産の危機に直面したら、ボーナスゼロ、給与大幅カット、人員整理などは当たり前の話だ。

 戦後初の人勧完全実施は、佐藤内閣、1970年になってからのことだった。それまでは、実施時期の先送りか凍結が相場だったのだ。最近こそ、人勧の完全実施が続いてきたが、法律上、人勧の尊重義務など存在しない。公務員だけが、いくら国の財政事情が悪化しようが例外で、優良企業並みの給与でなければならないとする理由はまったくないのだ。

(ちなみに、みんなの党は、公務員の人件費削減だけでなく、国会議員の歳費カット法案【月額3割カット・ボーナス5割カット】も再度、この国会に提出する予定である。)

シリーズ「有言不実行内閣」・・・(1)予算の総組み替え
シリーズ「有言不実行内閣」・・・(3)笑止千万!事業仕分け(前篇)