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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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TPPへの疑問、懸念に答える・・・①ISD条項

2013年3月18日  tag:

 安倍首相が先週金曜日(3/15)、やっとTPP交渉参加を表明した。遅きに失したとは言え、率直に評価したい。いよいよ「参加するしない」の不毛な争いに終止符が打たれ、国益をかけた交渉が始まる。
(交渉の課題等は先週の「直言」参照)

 そこで、今週は、反対派があえて提起し、国民の不安を意図的に助長している問題について、その懸念を払しょくすべく、説明していきたい。

 まず、ISD条項だ。これは、「協定国の規制によって参加国の企業や投資家が損害を受けた場合、国際機関に仲裁を申し立て、その国に賠償を求めることができる取り決め」を言う。例えば、発展途上国でよくある話だが、突然、進出企業の敷地が接収されるとか、新たな規制が設けられ、それが遡及適用されて「財産権」が侵されるといったケースが考えられる。こういった場合は、当該企業がその国を第三者機関たる国際機関に訴えられるのだ。

 反対派は、この条項を「日本の主権が侵される」「外国企業から訴訟が乱発される」等々と、まるで「おどろおどろしい毒素」のように訴え、まるでTPPでISD条項がはじめて盛り込まれるかのように国民をミスリードする。しかし、この条項は、国際的には既に1960年代以降、二国間の投資協定やEPA等に「標準的に規定」されている、まるで生命保険の「標準約款」のようなものなのだ。

 現に、日本でも、1978年の日・エジプト投資協定以降、20を超えるISD条項を含む投資協定を締結しているが、これまで一件の提訴もない。むしろ、このISD条項は、日本企業が、新興国、発展途上国等に投資をしていく上で、内国企業より不当に差別され、理不尽な政策や規制の変更により損害を被った場合に、相手国政府を訴えられる制度である。日本の規制が不当だと訴えられる可能性よりも、日本が得られるメリットの方がはるかに大きい。

 反対派はよく、米国化学企業がカナダ政府をNAFTAの仲裁法廷に訴えた事例を引き合いに出すが、この件では、同時にカナダの国内企業が国内の法廷に訴えて勝訴したことからもわかるように、そもそもカナダ政府の行為の違法性が認定された結果である。国内法でも問題となるケースでは外国企業に訴えられても仕方がない。

 また、反対派は、米国政府が、この枠組みで、同様に相当程度、提訴されている事実を言わない。いずれにせよ「双方向」なのである。もちろん、この条項があれば、将来、日本政府が訴えられる可能性はあるが、その規制等が合理的である以上、何を心配する必要はない。

 このISD条項をめぐっては、TPP参加国の豪州が、①先進国間では双方の裁判所が信頼に足りるので国際的な仲裁を利用するメリットが大きくないこと、②提訴されるリスクを負いたくないこと、を理由として反対している。したがって、本当に国益を守るために必要なら(私はそうは思わないが)、その豪州と連携して、最後までこの条項に反対すればいいのだ。TPPのような多国間交渉では、日本と豪州が反対する条項は、当然だが、合意できず、協定にも盛り込まれない。

(来週に続く)

安倍首相、TPP参加表明へ・・・遅きに失した交渉の課題
TPPへの疑問、懸念に答える・・・②食品安全が脅かされる