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日銀総裁の能力・資質とは?(下) ・・・財政と金融の分離は何処へ?

2013年3月 4日  tag: ,

 加えて、もう一つ別の観点は、「財政と金融の分離」という原則だ。私は、橋本政権の「中央省庁の再編」で、この「財政と金融の分離」に取り組んだ張本人だ。当時、「大蔵改革なくして行革なし」と言われたように、これは、政権の「一丁目 一番地」の課題だった。だから、誰よりも、どうして「財政」と「金融」を分離しなければならないかという事情・理由も知っているつもりだ。

 「財政と金融行政との間には利益相反関係がある」。橋本総理が自ら議長を務める「行政改革会議」を官邸に置き、  識者も入れて一年間議論した上で、「だから、財政と金融行政は組織的・人的に分離独立させなければならない」という結論に達したのだ。

 この原則に基づき、旧大蔵省から金融庁を分離・独立させ、日銀の総裁・副総裁からは大蔵省OBを一掃した。それまで、日銀総裁には、旧大蔵省事務次官と日銀プロパーが交互に就任する、すなわち「たすき掛け人事」という悪しき慣行が行われていたのだが、この時、それも廃したのである。総理にしかできない英断である。

 こうした経緯からも、日銀総裁・副総裁に財務省OBを据えるという事は、自民党政権下で決定した「中央省庁再編の 基準、考え方」に真っ向から反する。安倍首相は当時、まだ二回生の議員で、こうした中央省庁の再編や行革に深く関わっていなかったので、こうした経緯等について私は、先の予算委質疑(2/8)の中で紹介したつもりだったが、やはり、その「本質」を理解されていないようである。

 では、なぜ、「財政」と「金融行政」には「利益相反」があるのか。例えば、財政と金融行政が一つの組織内にあると、 財政出動を躊躇するがゆえに金融政策にしわ寄せをする危険性が常に付きまとう。過去には、財政出動を躊躇した大蔵省が必要以上に金利を金融当局に低く抑えさせ、その結果バブルが起こったということもあった。また、住専処理が遅れたという事件もあって、結果的には6850億円の税金投入で決着したが、その背景には、やはり財政出動を逡巡した大蔵当局の存在があった。さらに言えば、住専に大蔵OBが多数天下っていたため、その人たちの身分保障を慮り、退任する時期を見計らっていたという事情もあった。

 思い出したくもないが、議論の発端は、「○○しゃぶしゃぶ事件」に象徴される、大蔵省に対する過剰接待スキャンダルだった。ここで言うのは憚られるような風俗店に大蔵官僚が多数入り浸り、大蔵本省に東京地検特捜部が捜査に入り、 キャリア官僚まで逮捕されるという時代だった。そうした金融機関との癒着、スキャンダル、そういった反省のもとに、しっかり議論した上で、「財政と金融は組織的人的に分離すべし」との結論に至ったのである。

 しかし、この原則をどんどん崩していったのが、小泉政権の時代だった。小泉政権といえば、官僚と対峙した政権というイメージがあるが、実は裏では官僚、特に財務省とは非常に上手く付き合った政権で、「アメ」と「ムチ」というか、この「アメ」の部分では、例えば金融庁長官、日銀副総裁、公取委員長等に続々大蔵省OBを据えたのである。

 金融庁にいたっては、今や、長官、3局長ともすべて現役の財務官僚である。当時、大蔵省の銀行局、証券局等を廃止して金融庁を作ったのだが、これでは、結局、財務省の「焼け太り」と批判されてもしょうがないだろう。また、その時決めた「ノーリターンルール」、すなわち、課長以上の幹部は財務省には戻らないという原則も完全に骨抜きになった。

 上記観点に加えて、財務省の天下りネットワークにしっかりと組みこまれたOBが日銀を配下におさめるという弊害にも目を向けるべきだろう。こうしたOBは省に忠誠を誓うしかなく、いざという時は省益を主張し守るしかない宿命にあるのだ。政治家もメディアも国民も、財務省の恐さを知らない。私が「大蔵省改革」に取り組んでいた時、財務省がこの国の 毛細血管にいたるまで影響力を行使し、その省益を達成しようとする執拗な姿に驚かされたものだ。そして、それに歯向おうとする人間、組織には容赦なく攻撃を加える。

 財務省といえば、そうでなくても、国税(税の査察)、予算編成で強大な権力を有するこれに加え、日銀、公取、金融庁、、、。毛細血管どころか主要臓器にいたるまで「植民地支配」を強化すれば、その末にある日本の姿は一体どんなものになるのだろう。

 「財務省出身といった出自は問わない」。そんな甘いことを言っていては、この国は、経理部に支配された日本株式会社は、衰退の一途をたどるだけだ(この辺の詳細は拙著「財務省のマインドコントロール」参照)。
 何れにせよ、この日銀総裁・副総裁人事は3月中旬までには決めなければならない。そして、この人事は、安倍政権と霞が関の距離感を測る、特に財務省との距離感を測る、打って付けの材料、象徴的な人事とも言える。結党の原点に「官主導の統治機構を根底から変えていこう!」という哲学、理念を有するみんなの党が、安倍政権が提示した黒田東彦総裁案に賛成することはあり得ない。

【今週の直言】 日銀総裁の能力・資質とは?(上) ・・・財務省OBはこれにもとる

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