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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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ああ、公務員制度改革、お前もか!・・・安倍政権の安全運転

2013年11月11日  tag:

 消費増税も決まって、景気もそこはかとなく良い感じ?になりつつある昨今、安倍政権は隆々として長期政権をも伺う
勢いである。何をしても許されるといった雰囲気すら国会には漂い、国民に負担を求める前に自らが身を切る、なんて
改革もつとに忘れかけられている。

 いや、忘れているだけならまだ良い。大震災後、国民に増税を求めるなら、国会議員や公務員がまずは身を切るべし
と、私も含め、散々国会で訴えて実現した、たかだか年7.8%の給与削減。これが来年4月から打ち切られるようだ。
来年4月といえば、ちょうど消費税が8%に増税される時期。給与削減は公務員であろうともデフレ脱却にマイナスと
いうのが安倍政権の理由だそうだが、そんなことが一体許されるだろうか。

 せめて国会議員は、役人とは異なり、引き続き、この程度の給与カットは続けるべきだろう。ちなみに復興増税、
所得税は2013年1月からの25年間、住民税は2014年6月からの10年間、増税が続く。法人増税は、ご存じ、先般、安倍
首相の判断で今年いっぱいで打ち切りとなった。

 かつて、世の中を席巻した「公務員制度改革」も同じだ。あれほど「脱官僚」「官僚主導から政治主導へ」と声高に
議論されていた問題が、最近ではメディアでもほとんど取り上げられない。淡々とこの11月5日に「公務員制度改革
法案」の閣議決定がなされたと報じられるのみだ。その一週間前、私も出席して、古賀茂明氏、高橋洋一氏、岸博幸氏
ら脱藩官僚が呼び掛けて、この公務員制度改革の骨抜きを正そうという集会が開かれ「緊急声明」まで出したのに、
残念ながら、メディアで取り上げられる機会は少なかった。一体、「行革」や「ムダ遣いの解消」「特別会計の埋蔵金」
等の問題はどこにいってしまったのだろうか。

 しかし、我々は、私は、たとえそうではあっても、安倍自民党政権や世論に、公務員制度改革に限らず、「増税の前
にやるべき課題」をテーマに、これからも継続的に警鐘を鳴らし続けなければならない。それが我々の、私の政治家と
しても使命でもある。

 今回の公務員制度改革の最大の問題は、「天下り禁止」の骨抜きだろう。前安倍政権で「天下りのあっせんは禁止」
となり、民主党への政権交代で、それをかいくぐる「現役出向の拡大」が行われたが、今回は、その「現役出向」を
さらに拡大させるものとなった。「天下り」は、役所を辞めてからいくから問題なのであって、そうなら辞める前、
現役のままでいくなら問題なかろうと霞が関が悪知恵を出して民主党政権がそれに乗った。この「現役出向」、昔なら
「官民交流」という大義名分があって、若手官僚が民間会社で働いた経験をその後の役所での仕事に活かすといった
メリットもあったが、今ではこの制度の悪用で、役所で「用なし」になった人材が定年を迎えるまで民間会社や独立
行政法人でお世話になるという、双方にとって何の意味もないやり方になり果てた。それを安倍政権はさらに拡げる。

 内閣人事局を新設し、600人程度の幹部公務員の人事を、官邸(内閣)が握るというのは良いが、「人事権の一元化」
は図られず、相変わらず人事院と財務省の人事部門(給与査定)は別に残る。特に、人事院が口をはさめる余地を多分
に残したという意味では、前回の「甘利法案」(麻生政権時の公務員制度改革では内閣人事院を人事局に統合)よりも
後退し、屋上屋を重ねる過ちを犯している。自民党が野党時代、みんなの党と共同提出した法案では、人事院はおろか、
財務省の人事部門まで統合した、理想形の「内閣人事局」だった。自民党の政権をとった後の豹変ぶりがすさまじい。

 その自民・みんなの法案では、幹部公務員(部長、審議官以上。指定職)を一般職から特別職にし、その身分保障を
なくした。あたかも、民間会社で一旦辞表を出した上でボードメンバー(役員)になるように、そこから先は「抜擢」
「降格」「解任」ありの実力主義にするためだ。時の内閣の方針に従ってもらうという意味合いもある。こうした改革
も今回は見送られた。

 まだまだ、「骨抜き」の部分はある。それは参考につけた「脱藩官僚」たちの「緊急声明」と「解説」にゆだねたい。
外交や安全保障、経済や財政・金融、社会保障といった政策も大事だろう。しかし、それを本当に国民本位に、既得
権益やしがらみに足をとられることなく実行していくためには、こうした「公務員制度改革」や「中央集権の打破=
地域主権」の実現という「国のかたち」を変える改革が是非とも必要なことは今さら言うまでもないだろう。

(参考)【国家公務員制度改革に関する緊急提言】 2013年10月30日
(古賀茂明、高橋洋一、原英史、岸博幸氏ら脱藩官僚が出した声明と解説)

 国家公務員制度改革法案が月内にも国会提出の見通しと報じられているが、政府から提示されている法案骨子を見る
と、本来あるべき改革とはかけ離れた内容と言わざるを得ない。

 国家公務員制度改革については、第一次安倍内閣のときから集中的な検討がなされ、2008年には与野党協議を経て
「国家公務員制度改革基本法」が制定された。ところが、今回の法案骨子は、かつて議論されていた改革プランとは
異質の内容になっている。

 2008年基本法に基づき、2009年に麻生内閣のもとで提出された法案(いわゆる甘利法案)は、十分とは言えない
までも、一定程度の改革を前進させる内容だったが、これと比べても、大幅に後退している。改めて、かつての改革
プランに立ち返り、法案を抜本的に再検討すべきだ。

(1)「内閣人事局」について
「人事院の機能を温存したまま内閣人事局も作る」のではなく、2008年基本法及び2009年甘利法案のとおり、「人事
院、総務省等の機能を統合して内閣人事局を作る」ことにすべき。

(2)幹部公務員制度について
かつて野党時代の自民党が提出した「幹部公務員法」のように、幹部公務員の身分保障の緩和に踏み込むべき。

(3)「国家戦略スタッフ・政務スタッフ」について
2008年基本法及び2009年甘利法案のとおり、内閣主導の政策立案をサポートすべく制度化すべき。

(4)公募制度について
2008年基本法及び2009年甘利法案のとおり、内閣主導で公募導入を推進できるよう制度化すべき。

(5)天下り・現役出向について
今回の法案骨子で新たに追加された、現役出向拡大のための規定(2010年退職管理基本方針の法制化)を削除し、
第一次安倍内閣以来の「天下り禁止」 の方針を堅持すべきだ。

 なお、以上のいずれの事項も、2008年から2009年の法案策定過程で、霞ヶ関官僚及びそれと連携する自民党議員ら
から強硬に反対のあった点である。

<解説>

(1)「内閣人事局」
かつての改革プラン(2008年基本法、2009年甘利法案)では、「内閣人事局」は、人事院、総務省等に分散された人事
関連の機能を統合し、内閣主導の幹部人事を支えることのできる体制を作ることを目指していた。9月時点で政府が示
した法案骨子では、2009甘利法案の「内閣人事局」関連部分どおりとされていた。つまり、人事院・総務省の機能は
相当程度統合することとし、当初プランに照らし、満点とは言えないまでも十分評価できる 内容だった。ところが、
その後の調整を経て、10月時点で示された政府の法案骨子をみると、
・任用、採用その他の事務につき、内閣人事局と人事院との間で複雑怪奇な業務分担を設定
・幹部職員の級別定数の設定につき、内閣人事局の権限としつつも、「人事院の意見を尊重」との規定を追加
といった変更が加えられた。すなわち、「人事院の機能を統合して内閣人事局を作るのでなく、「人事院の機能を温存
したまま内閣人事局も作る」という話にすり替えられてしまった。これでは、単に新しい組織を作るだけであり、人事
機能の分散した無責任体 制をさらに悪化させるだけになりかねない。

(2)幹部人事制度
幹部人事の一元管理を実効あらしめるためには、単に内閣人事局という器を作るだけでは足りず、幹部人事制度の改革
が必要だ。現行の公務員制度では、次官・局長などの幹部職員も、係員レベルの職員と 同じ身分保障の対象であり、
よほどのことがない限り免職も降格もされない。この結果、民間人や若手を幹部に起用しようとしても、幹部ポストに
ある職員の身分保障に阻まれ、結局、年功序列型の順送り人事によるしかない...というのが実態だった。かつて、自民
党が野党だった際には、この点を改めるべく、幹部の身分保障を緩和する「幹部公務員法案」を提出し、法案審議にも
臨んでいた。ところが、今回の政府の法案骨子には、「幹部公務員法」は含まれていない。これでは、「内閣人事局」
だけ作っても、これまでどおりの幹部人事を追認するだけの機関になってしまう。

(3)「国家戦略スタッフ・政務スタッフ」
2008年基本法及び2009年甘利法案では、内閣主導の政策決定を推進するため、官邸に「国家戦略スタッフ」、各大臣の
もとに「政務スタッフ」をおき、重要政策の企画立案をサポートすることとしていた。また、人数にも制限を設けず、
政権の判断で実効性のあるチームを形成できることとしていた。しかし、今回の政府の法案骨子では、
・「国家戦略スタッフ」は既存の総理補佐官をもって置き換えることとし(人数の増員は行わない)
・「政務スタッフ」は、各省1名の大臣補佐官としている。政策の企画立案サポートは一定規模のチームで行うことが
 不可欠であり、こうした制度では到底実効を伴わない。

(4)公募制度
2008年基本法及び2009年甘利法案では、公募制度の導入は、重要な柱のひとつと位置付けられていた。2009年甘利
法案では、内閣主導で公募の導入を進めるため、
・公募の手続(総理が公募ポストを指定すること等)を法律で定めるとともに、
・数値目標を定める等の規定を設けていた。
しかし、今回の政府の法案骨子では、これらの規定が削除され、単に公募指針を定める程度のことになっている。これ
では、公募導入の推進は期待できない。

(5)天下り・現役出向
政府の法案骨子では、かつての2009年法案にはなかった「人事交流の対象となる法人の拡大、手続の簡素化」という
規定が盛り込まれている。2010年に民主党政権のもとで、いわば天下りに代わる抜け道として、現役出向を拡大する
方針を示す「退職管理方針」が決定されたが、この規定は、同方針に沿って現役出向を拡大するための規定と考えら
れる。「退職管理基本方針」は、かつて野党時代の自民党から批判があったとおり、「天下り禁止」という第一次安倍内閣
以来の方針を覆そうというものである。これでは、「天下り禁止」という方針に全く逆行することになる。

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