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TPPへの疑問、懸念に答える・・・⑤食品の安全が脅かされる

2011年11月16日  tag:

 例えば、米国流の残留農薬や食品添加物の基準が押しつけられる、危険な遺伝子組み換え食品が流通する、BSEに牛肉輸入制限が撤廃させられる等々、国民の不安は尽きない。この点は、消費者の心理からすれば当然のことなので、丁寧に説明したい。

 まず、世界で食品の安全基準はどうなっているか。これには、WTO(世界貿易機構)にSPS(衛生植物検疫措置) 協定があり、原則として、その国の主権が認められている。食品の安全基準は、その国の責任で規制することが認められているのだ。

 この点、TPPの前身たるP4(シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリ) の衛生植物検疫措置(SPS)では、「WTO のSPS 協定の権利と義務は制限されない」と規定されており、TPPでもこの原則は基本的に踏襲されるだろう。したがって、現在、TPPでは、この安全基準の緩和より、その手続きの迅速化・透明化が議論されている。

 遺伝子組み換え食品の規制については、どの国も安全性が確認された遺伝子組み換え食品しか流通を認めていないが、異なるのは表示の義務付けだ。米国は、表示は一切不要という立場で、日本は、遺伝子組み換え材料が食品中に残存する製品についてのみ、表示を義務付けている。EUはもっと厳しく、遺伝子組み換え材料を使用したかどうかの表示をすべてに要求している。過去、米国は膨大なコストがかかるとしてEU の表示規制に反対した経緯があるが拒絶されている。2002年のAPEC貿易大臣会合でも、米国が同様の要求をしたが、日本と同様の表示制度を持つ豪州やニュージーランドと共闘して阻止した。

 このSPS協定には、「科学的根拠」があれば、上乗せの厳しい基準を各国が設けることができるという規定もある。実はこの規定を盛り込んだのは、より厳しい安全を求める消費者団体の強い意向を汲んだ米国である。そして、この安全基準や規定の実効性を担保する機関に「コーデックス委員会」(FAO/WHO食品規格委員会。BSEなど動物に係るものはOIE[国際獣疫事務局])があり、その「科学的根拠」「知見」の有無を審査している。したがって、BSEや残留農薬の国内規制も、それに「科学的根拠」があれば正当化されるのだ。

 今、福島をはじめ被災地の農産物が、必要以上の輸入規制を各国で受けている。これも今後、日本政府は「科学的根拠」に基づき、その是正を求めていかなければならない。そうだとすれば、日本も「科学的根拠」に基づき、日本の規制が正当であることを証明しなければならない。

(シリーズ/TPPへの疑問、懸念に答える)
 ④ISD条項で外資の日本への訴訟が頻発
 ③一旦TPP交渉に入ると離脱できない
 ②貿易自由化はTPPではなくFTAやEPA等二国間交渉で進めるべきだ
 ①TPPは米国の陰謀、日本狙いうちの輸出倍増策だ

TPPへの疑問、懸念に答える・・・④ISD条項で外資の日本への訴訟が頻発
TPPへの疑問、懸念に答える・・・⑥ルール作りを主導すると言っても、もう遅いのではないか?