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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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『取り込み型』と『突き放し型』・・・財政・経済一体改革会議

2006年5月29日  tag:

 政府・与党が22日、「財政・経済一体改革会議」の初会合を官邸で開いた。6月の「骨太の方針」に盛り込む「聖域なき歳出削減」の検討をするためだ。これは明らかに、これまでの政策決定スタイルの変更となる。その仕掛け人は、与謝野経済・財政担当大臣だ。

 これまで小泉政権は、首相のお膝元、官邸に置かれた経済財政諮問会議で予算編成の骨格を決めてきた。いわば与党幹部をメンバーに入れない「突き放し型」で、学者や財界人主導のスタイルだった。

 それが、今回の一体改革会議では、与党の幹部もメンバーにした「取り込み型」となった。与謝野大臣には、当然、自らが企画し主導した、橋本政権当時の「財政構造改革会議」が頭にあるのだろう。その会議も、歴代首相・大蔵大臣をメンバーにし、与党の幹部や派閥の長をも取り込んだ巧妙な人選で、当時、メリハリのついた歳出削減を実現させたのである。逆にうまくいきすぎて、それが後に、不況に突入した元凶とも批判された、いわく付きの会議であり、手法でもあった。(注)

 「取り込み型」と「突き放し型」には、一長一短があって、どちらがベターとは一概には言えない。ただ、「突き放し型」が成功するためには、その前提として「強い首相」の存在が不可欠である。それでこそ、官邸主導で出した歯切れのよい結論を、与党の抵抗を押し切って実現することができる。高支持率に支えられた小泉政権初の「骨太の方針」(2001年6月)が良い例だったし、橋本政権時の「行革会議」(中央省庁の再編を実現)も、当時60%前後の支持率があった橋本首相の存在があったからこそできた「突き放し型」(学者や財界人、マスコミ人等だけで構成)だった。

 一方、「取り込み型」には常に、党側の思惑でむしろ官邸側が「取り込まれ」、不満足な結果しか出ないというリスクが伴う。ただし、うまく党側出席者に当事者意識を持たせ、「おだて、なだめ、すかし」て汗をかかせれば、思いの外、党内調整もうまくいき成果も出やすいというメリットもある。

 橋本政権時の「財政構造改革会議」はその典型例で、与謝野大臣には、その「夢よもう一度」という思いがあるのだろう。当時は、あの竹下元首相ですら「公共事業の削減」を主張し、「予算には枝振りが必要だがもはやそう考える必要もない」とまで言われた。加藤幹事長(当時)は農水関係、山崎政調会長(当時)は防衛関係に強かったので、関係予算の削減にも大変努力された。

 こうした形で、ハンドリングさえうまくできれば、「取り込み型」も強力な改革エンジンとなる。当時は、その役を梶山官房長官・与謝野副長官ラインが担い、具体策は「与謝野キッズ」と呼ばれた大蔵省主計官たちが、夜な夜な与謝野氏とホテルの一室に集い書き上げた。それを政治家が政治の責任でやり遂げたのである。

 ちなみに、その成果は「公共事業は7%減。その後も前年度比マイナス」「ODAは10%減」「社会保障費は本来8000億円の自然増を3000億円増に」「防衛費は±0」「科学技術振興費は5%増」というものだった。まさに歳出削減一点張りでない財政「構造」改革が実現できたのである。

 与謝野大臣の頭の中はざっと以下のようなものだろう。今後、安倍氏、福田氏いずれが首相になろうとも、小泉首相ほどの「強い首相」は期待できない。また、聖域なき歳出削減といっても、乾いた雑巾をさらに絞り込むような「深掘り」を今後はせざるをえない。ますます難度が高まる状況下で、もはや、これまでの「突き放し型」ではやりきれないとの思いだ。私個人的には本来、官邸主導、「突き放し型」があるべき姿とは思うが、理解できる判断ではある。

 ただ、この決定が効を奏するか否かは、今後の与謝野・中川ラインの手腕如何であろう。参院選の結果や小沢民主党を気にしすぎ、党主導が原因で「ほどほどの決着」になるようだと、また、財務省を利用するのではなく逆に利用され、財務省ペースにはまるようだと、自民党政権もそう長くはない。

(注)ただし、私も与謝野氏も、不況突入の真因は、大蔵省が仕掛けた金融ビッグバンであり、当時批判された「9兆円の負担増」や「歳出削減」ではないと考えている。当時の経済体力からいって、これらは克服可能な痛みであったのであり、不況の引き金をひいたのは、むしろビッグバンが招来した北拓、山一証券等の連鎖破綻が金融収縮を起こし、その結果設備投資の激減を招いたからだと考えている。このことは当時のGDP統計を子細に分析すればわかる。

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