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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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一から出直せ!・・・社会保険庁改革

2006年6月 5日  tag:

 またまた不祥事、年金の不法免除問題が発覚し、政府提出の「社会保険庁改革法案」の国会審議が頓挫した。元々、何が改革なのか、これで何がどう変わるのか、まったくわからない法案だったので、この際、廃案にし一から出直すべきだろう。

 まず、皆さんには「外局」と「特別の機関」の違いがわかるだろうか? 30年近く行政や政治の現場にいた私ですら、その区別をうまく説明できないのだから、「わからない」で結構だ。前者が社会保険庁の、後者が、法案で社保庁を衣替えしてできる「ねんきん事業機構」の、国家行政組織法の位置づけだ。
 当初、民営化や独立行政法人化の議論がされていたのに、結局、同じ厚生労働省の中につくる同じような組織となってしまった。外部から専門家を招聘し「年金運営会議」や「特別監査官」を設置する等の取り繕い策はあるが、所詮「看板の掛け替え」としか言いようがない。

 また、その名称中「ねんきん」という「ひらがな表記」が何とも国民を馬鹿にしているではないか。複雑な年金制度をわかりやすく、親しみやすくというのが政府の説明だが、名前だけを変えて目先をくらませようという意図がありありで、それだけ中味に自信がない証左であろう。ちなみに、国家行政組織のひらがな表記は、国土交通省の「まちづくり推進課」ぐらいだ。

 今回の事件でもそうだが、社保庁の諸悪の根源は、その組織の「文化・カルチャー」「土壌」の問題だ。そこを根こそぎにやらない限り「改革」はない。

 その意味で、以前にも指摘したが、風通しの悪い3層の人事構造(厚生本省キャリア+社保庁採用キャリア+現場ノンキャリア)の破壊がまず必要だ。今回は、そこに民間出身の村瀬長官もからみ、四層構造の、不平不満がたまりやすい組織になっていた。これでは職員の士気はあがらない。結果、姑息な「分母対策」のようなものが出てくる。

 組織文化を変えるには、他の組織との統合を検討するのも一案だ。これも前に提案したが、社保庁を国税庁と統合し、納付率のアップと人員削減、ムダ減らしを同時に図るべきだと思う。
 97年当時、中央省庁の再編を検討した官邸の「行政改革会議」が、旧大蔵省から国税庁を分離し、地方税徴収業務も統合して、「歳入庁」を設置するという構想を検討したことがあった。巷、「影の権力機関」と言われていた、旧大蔵省の持つ「経済警察権力」を、不偏不党、公正に行使させようとする試みだった。これに、年金徴収業務も統合すればいい。
 これにより、万単位の公務員の削減が可能となる。また、徴税事務のノウハウや組織を活用することにより、納付率も格段にアップすることだろう。かつ社保庁内の人事構造も壊すことができる。一石三丁だ。
 ただし、「歳入庁」は、税、保険料両面で強制徴収権限を持った一大権力機関となることから、財務省から分離独立させ、その権力が政治的にも中立に、かつ公明正大に行われることを担保する必要がある。警察権力を担う警察庁が「国家公安委員会」の下に置かれているのと同様に、民間人も入れた独立行政委員会の下に置かれるべきであろう。

 厚労省と財務省は、この改革案には、表向き「保険料と税金とは性格が違う」と言って反対だ。しかし、その本音は、自らの権限を殺ぐのは嫌だということでしかない。現に、欧米では徴収部門を統合している国もある。次期国会までに、こうした「本当の改革案」を政治の責任で策定すべきであろう。

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