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シリーズ/なぜ国際貢献なのか?・・・ (9) 国益とは何か? 石油の安全保障

2007年12月17日  tag:

 また、「テロ新法」制定派が、何に窮したのか、この頃しきりに強調するのが「石油の安全保障・安定供給」である。インド洋上でのテロ抑止活動が、結果的に「シーレーン防衛」に繋がっているという点にもふれる。

 しかし、「石油の安全保障」をいうなら、中東産油諸国と、イスラエル問題を通じてギクシャクした関係にある米国に追随することが、どれほど日本の、この地域での国益を損ねているかに思いを致した方が良い。

 これまで日本は、中東諸国の間では評判が良いというか、畏敬の的だった。あの敗戦の後、がれきの山の中から世界第二の経済大国となった日本の復興に心底敬服し、自分たちも「そうなりたい」とお手本にする国、それが日本だったのである。加えて日本は、歴史的に、米国や英国と異なり、この地域において「手を汚していない」という、貴重な立ち位置もあった。

 ところがどうだろう。アフガン、イラク戦争と、それまでの相場を大きく踏み外し、米国追随で自衛隊派遣を行ってきた結果、中東産油国の日本を見る目は確実に変わりつつある。また、つい一昔前までは、夜道も安心して歩いていた商社や現地企業の駐在員も、最近はテロの標的になるのをおそれ、おちおち外出もできないという。こうした事態が、将来的な日本への石油の安定供給にプラスに働くわけがない。

 さらに、あの間違った戦争、イラク戦争こそが、中東の不安定化をもたらし、今の原油(ガソリン)の高騰を招いた大きな要因の一つとなったのではないのか。確かに、現下の異常ともいえる原油急騰は、サブプライムローン問題でリスクを嫌った投機マネーが原油や金市場に流れ込んでいることが大きいが、根底にイラク戦争があることは厳然たる事実である。そのイラク戦争を支持した人に「石油の安全保障」を唱える資格はない。

 「シーレーン防衛」にまで言及するに至っては、そもそも、それはテロ新法の目的にもなっていないし、仮に本気にやろうとすれば、常時「海上警備行動」を海自に命令するぐらいでないと不可能な話だ。しかし、そもそも、この海域での「シーレーン防衛」は、日本列島に存する基地からの米軍出動で確保されていることは前にもふれた。私も、インド洋上での海自の補給活動が、反射的に多少「シーレーン防衛」に役立っていることは認めるが、物事の本質とは関係ない。

 このように「日米同盟の重要性」や「石油の安全保障」を声高に叫ぶ人ほど、そこで思考が停止してしまい、その先の、国際社会、国際政治のダイナミックな相場観に根ざした頭の体操ができない。いや、もしかしたら、「国民はバカだから、この程度のことを言っておけば簡単にだませるだろう」とでも思っているのかもしれない。いずれにせよ、こうした低次元の議論が横行している限り、日本が真の国際国家となり、真に国際貢献することなどできないであろう。

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