国民一人一人の夢を実現できる社会を実現したい

江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

文字サイズ
Home  > コラム  > 今週の直言  >  シリーズ/民主党政権に望む (2) 藤井財務相の発言に愕然・・・国家戦略局と財務省の戦い

カテゴリー月別

シリーズ/民主党政権に望む (2) 藤井財務相の発言に愕然・・・国家戦略局と財務省の戦い

2009年9月19日  tag: ,

「予算編成権は財務省にある」。この藤井財務相の発言を聞いて仰け反った。まるでタイムスリップして彼が主計官を務めていた頃の昭和40年代に舞い戻ったかのようだったからだ。ご高齢であることを責める気は更々ないが、やはり新財務相は「浦島太郎」だったのか。

 これは常識の部類だが「予算編成権は内閣にある」(憲法第86条)。財務省(大蔵省)には、その内閣から、便宜上、これまで予算編成の「事務」が委任されていたに過ぎない。こうした基礎知識すら知らないか、あえて知らない振りをして、財務官僚の言いなりに「予算編成権は財務省にある」と言い放ってしまう。これでは国家戦略局は、廃止される「経済財政諮問会議」以下の組織に成り下がってしまうだろう。ご承知のように、私が橋本政権下で提案・設計した「経済財政諮問会議」は、「予算の枠組み」「基本方針」という予算編成の「肝」をおさえる、対霞が関、対財務省で、政治主導を実現するための機関だったからだ。

 しかし、その「経済財政諮問会議」ですら、来し方を振り返れば、それは常に、予算編成をめぐる財務省との「綱引き」に翻弄されてきた。小泉政権の一時期は、確かに民間議員4人が原案を書き、担当大臣主導で「骨太の方針」を決定し、対財務省でも主導権を握った。しかし、その後、この「道具立て」を使う意思も能力もない首相や担当大臣が続いた結果、経済財政諮問会議は「鳴かず飛ばず」の状態になったのである。結果、見事に財務省が復権した。

 歴史が教えるとおり、この国は財務省が支配し政治家をいいように操ってきた。ふるくは「土光臨調」がそうだったし、最近では「小泉改革」が、財務省主導の「予算ぶった切り」改革だった。前者は、「増税なき財政再建」と称して、財務省の悲願、3K(国鉄、健保、米)赤字解消が目的だったし、後者は、「三位一体改革」(地方分権)も「三方一両損」と称した医療改革も、単なる「財政の帳尻あわせ」で真の改革とは程遠かった。この二の舞を鳩山政権でしてはならない。

 だからこそ、民主党政権は、官邸に国家戦略局を置こうとしているはずだ。しかし、もし、鳩山首相や菅戦略相が藤井財務相の言うとおりにしたら、のっけから「政治主導」なぞ望むべくもないだろう。民主党内から早速「財務省とは手を握って、国民受けする国土交通省や厚生労働省を叩く」という声があがっているのも気になる。「官僚支配は財務省支配」「官僚主導は財務省主導」、この基本認識を政権内で共有しないかぎり、「脱官僚依存」「官僚政治の打破」なぞできはしない。

 以上の観点から、国家戦略局設立に向けて、いくつか提言したい。

 まず、「国家戦略局」の位置づけが最重要となる。経済財政諮問会議のような内閣府に置く諮問会議(調査審議機関)ではなく、総理直属、すなわち、内閣官房より上位の、単なるスタッフ組織ではなく、官邸の意思決定過程に組み込まれたライン上の正式な組織(内部部局)として位置づけなければならない。そうでないと、官房長官より上位の副総理が担当する組織足り得ない。

 次に、最低限、経済財政諮問会議並みの「予算の基本方針や枠組み」を決定する権限を与えなければならない。ただ、この「基本方針」「枠組み」という言葉自体を明確に定義しないと経済財政諮問会議の二の舞になる。財務省との「綱引き」はここを巡って熾烈になるからだ。

 私が経済財政諮問会議を設計した時の理解では、この会議では「予算の性格(緊縮か景気刺激か)、規模(総額と国債政策の選択、税制の活用)、重点項目(どの政策分野に配分)、その支出規模等」を決め、その上で、具体的な査定作業、すなわち、防衛費なら戦闘機を何機買い、公共事業なら道路や橋の箇所付けをどこにする、といった事務的な作業は財務省に任せても良い、というものだった。ここを鳩山首相主導ではっきりとさせる必要がある。

 ただ、強調しておきたいのは、「経済財政諮問会議」を「国家戦略局」と変えようが、どのような権限を割り振ろうが、それが財務省主計局と併存する以上は、永遠に「官邸vs財務省」の主導権争いが続くということだ。これまでの政権の失敗はここにある。だから、この主計局との組織再編が必要不可欠になるのだ。

 この点、みんなの党は、官邸に「内閣予算局」を設置することで問題を完全に解決する。主計局(理財局等を含む。)を官邸に持ってくることで、そもそも、このような問題が起こりようがないからだ。その場合、財務省は金融行政を取り戻して金融省になる(財金分離は貫徹される)。官邸(首相)が「カネ」と「人事」(内閣人事局)を握ってこそ、はじめて政治主導の体制が整うのである。

(参考)憲法第86条
「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」

シリーズ/民主党政権に望む (1) ~高速道路の無料化は断念せよ!
シリーズ/民主党政権に望む (3) 内閣人事局は何処へ?