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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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郵政国営化への道・・・(1)天下り人事と国民負担の増大

2009年11月 2日  tag: , ,

斉藤次郎氏の日本郵政社長への登用については、既に多々論じられているので、ここでは縷々述べない。ただ、これで民主党の言う「天下りの根絶・渡り斡旋の禁止」は、なし崩し的に尻抜けになっていくことだろう。

 なぜなら、この人こそ、「10年に一度の大物次官」といわれるように、官僚の天下りネットワークを差配してきたドンとも言うべき人だからだ。ご自身も旧大蔵省所管の社団や財団等を「渡り」歩いてきた。

 鳩山政権は、そのような人を、よりによって超一級のポストに、しかも「政治主導」で据えた。「天下り渡り斡旋の極致」で、この世の中で一番やってはいけない人事をやってしまったわけだ。しかも、こうした、どう見ても民主党のマニフェストに真っ向から反する人事に民主党内から公然と批判の声があがらない。今の民主党の党内事情をまさに象徴している。

 これで、霞が関には「なんでこんな人事が許されて我々の天下りが許されないのか」といった不満が充満していくことだろう。今後、この人事はボディーブローのように効き、鳩山政権の潮目が変わっていく。政権交代に期待した者としては「痛恨の一事」だ。

 しかし、より国民にとって深刻な問題は、この人事が、郵政事業の抜本的見直しと相俟って、「官から民へ」という時代の流れを逆行させ、郵政会社の国営化へと舵を切ることになる点だ。これで将来の国民負担は確実に増大することになる。なぜか。それは、国営化で全国の郵便ネットワークを維持するためには、新たな国費投入が不可避になるからだ。

 なるべくわかりやすく説明しよう。そもそも、なぜ、郵政三事業の民営化をしなければならなかったか。それは、一つには、民営化しなければ、将来、郵貯や簡保が破たんしてしまうことが目にみえていたからだ。

 たしかにこれまでは、郵貯、簡保で得た収益が郵便局を支えてきた。しかし、それはあくまで、その300兆円を超える資金を大蔵省の資金運用部に自動的に預け(「預託」という)、それを原資として「財政投融資」という形で、道路公団等の特殊法人に高い金利で貸付けていたからこそできる芸当だった。そう、郵便局は何もしなくても比較的高金利の果実(預託金利)を、それで得ることができたのである。それを私は郵便局への「ミルク補給」と称してきた。

 しかし、この財政投融資を通じた「ばらまき」「利権体質」等が批判され、この預託は、私がいた橋本政権時に禁止された(「財投改革」)。その結果、その莫大な資金を自主運用しなければならないことになったのである。

 「ミルク補給」がなくなった以上、その運用先は自分でみつけ、そして、相応の利鞘、利益を稼いでいく必要がある。それが民営化の意義であり必然だった。他の民間金融機関とイコールフッティング(競争条件の平等)の下で、貸出をはじめ新たな事業展開をして収益をあげていかなければならないのだ。

 この点、民営化された今でも、「自主運用」と言いながら、その莫大な資金の7割は国債で運用されている。今は政府が100%出資の国策会社のようなものだから、あまりリスクの高いものに投資できないし、そもそも、上でふれた民間金融機関とのイコールフッティングができていないから、事業の多角化も自由にはできないからだ。

 だからこそ、政府株も売却して上場も果たさないと「一人前の会社」にならないのだ。それを、これまでの方針によれば、民営化された07年から10年間かけて、特に、郵貯、簡保は完全民営化(100%株式売却)することになっていた。

 それが今回の国営化路線で頓挫する。来年の上場もなくなり株式売却も今国会の特別立法で凍結される。他の民間金融機関とイコールフッティングではないから、そのまま新規貸出等をやれば完全な「民業圧迫」となる。政府100%出資の国営国策会社だからリスクもあまりとれない。

 それでは安全な国債での運用を続けるのか。しかし、これは今の低金利時代だからこそ可能で、今後、金利上昇、高金利局面になった時に、低利の国債運用では逆利鞘が出る。また、今でも、国債の金利が郵貯の預入れ金利より高いと知った人は、誰しも郵貯から国債へ資金をシフトさせるだろう。そもそも、この国債運用という「ビジネスモデル」は通用しなくなるのだ。

 鳩山政権は相変わらず「郵貯、簡保で得た収益で郵便ネットワークを維持しよう」と考えているのかもしれない。しかし、それがまったくの幻想であることが、このことからわかるだろう。

 だからこそ、民営化をさらに進め、貸出業務も含め事業の多角化をしていかないと、郵政会社は破たんしてしまうのだ。それをせず、かつ、郵便ネットワークを維持しようとすれば、その選択肢は税金投入しかなくなる。国民負担は確実に増大するのである(続く)。

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