国民一人一人の夢を実現できる社会を実現したい

江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

文字サイズ
Home  > コラム  > 今週の直言  >  シリーズ/「財務省支配」の何が問題か?・・・①橋本行革の最大の課題

カテゴリー月別

シリーズ/「財務省支配」の何が問題か?・・・①橋本行革の最大の課題

2011年9月12日  tag:

 野田内閣は、「財務省支配政権」と言われる。私もそう指摘してきた。それでは、なぜ、「財務省支配」がいけないのか、その本質的な部分が語られることが少ない。

 私は、その財務省(旧大蔵省)と真正面から戦ったことのある、数少ない人間の一人だと自負している。なぜなら、私が総理秘書官としてお仕えした橋本政権では、中央省庁の再編=「橋本行革」が最大の課題となり、その中で一番の柱が「大蔵省改革」だったからだ。

 この「行革」の発端は、「○○しゃぶしゃぶ事件」に象徴される、大蔵・金融接待スキャンダルだった。当時のメディアや世論の言葉を借りれば「大蔵改革なくして行革なし」。大蔵省から金融行政を分離・独立させるという「財政と金融の分離」が焦点だった。

 今だからこそ言うが、この問題に、当初、橋本首相は後ろ向きだった。彼自身が大蔵大臣経験者であり、「親大蔵派」だった。「大蔵のドン」と言われた竹下元首相は橋本氏の派閥の実質上のボスであり、その影響力も極めて強かった。

 しかし、後に述べるように、私には霞が関に奉職してきて、メディアや世論とはまた違った角度、意味で、「大蔵改革なくして行革なし」の意を強くしていた。

 ただ、この「大蔵改革」の壁は尋常ではなく厚かった。今、「公務員制度改革」や「天下りの根絶」に政治家が呻吟しているが、その比でもない。なぜなら、後者が、各省庁横並びの改革であるのに比し、前者は「大蔵省」という一省狙い撃ちの改革だったからである。

 意外に思われるかもしれないが、霞が関、役所という生き物は、横並び、平等で、かつ、理屈で説得されれば、最終的には自らに不利なことでも飲むものなのだ。佐藤内閣の「一省庁一局削減」などがその例だ。逆に、横並びではなく、自分たちだけが狙い撃ちにされると思えば、徹底的な防衛本能が働く。この点は、石原信雄元官房副長官(自治省事務次官出身で「霞が関のドン」として長年君臨)も指摘している。

 さらに、これが決定的な理由だが(後で詳述)、こと「大蔵省」に対しては、政治家も他省庁の官僚も、とても「足を向けて寝られない」のだ。だから「大蔵省に切り込むなどめっそうもない」ということになる。

 なぜか?ご推察のように、大蔵省(財務省)には、予算の査定権と国税の査察権がある。政治家は、与野党とも、大蔵省に頭を下げて、地元に「橋をかけてくれ」「道路をつくってくれ」といった陳情をする。日頃お世話になっているのだ。また、政治家には「脛に傷を持つ」人が多い。金銭スキャンダルがその典型だ。その意味では、税の査察権は隠然たる影響力を持つ。

 他省庁の官僚も、予算の要求官庁は査定官庁には頭が上がらない。当然の話だろう。だから、橋本政権の最大の課題、中央省庁の再編、その一番の柱たる「大蔵改革」に真正面から取り組もうという政治家も官僚もいなかった。だから、不肖、私が、総理側近として矢面に立つことになったのである。

 付言すれば、「大蔵省」という、誤まったエリート意識を助長していた名称も、フラットな「財務省」という名称に変えた。この名称変更の顛末も後ほど詳細に述べたい。

 その「財務省」が、野田政権になって完全復活をとげようとしている。そして、菅前政権があまりに「官僚排除の政治」をとったために、国民もむしろ、この「官僚とともに歩む政権」を好感しているふしがある。官僚政治の弊害よりも、民主党の政治家に国政をまかせる方がはるかに弊害が大きい、、、、、、。

 しかし、この、財界首脳やオピニオンリーダー、メディアはもちろんのこと、与野党の幹部、時の総理ですら籠絡する、今の日本を牛耳るスーパーパワー官庁の力がいかにすさまじいものであるか。これから述べる「財務省支配」の構造を知れば、そんなに甘い、悠長なことを言ってはいられないということが、おわかりいただけるだろう。

 この日本という国は「官僚国家」「官僚内閣制」「官僚政治」等々と揶揄されるが、その実は「財務省支配の国」なのである(次週に続く)。

通常国会を振り返って・・・政策三昧の日々
シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・②財政と金融の分離