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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区)

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シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・②財政と金融の分離

2011年9月19日  tag:

 「橋本行革」の最大の課題が「財政と金融の分離」だったことは前週述べた。なぜか?それは、単に大蔵・金融スキャンダルが起こったということではなく、この日本という国が、90年代の日本が、「失われた十年」と評されたように、日本没落の構造的要因、その象徴が「金融」だったからである。

 それまでの金融行政は「護送船団方式」と称され、大蔵省が金融機関を許認可でガチガチに縛り、その箸の上げ下ろしにまで口を出していた。金融を知らず、いや、「宿帳(大福帳)方式」の予算案しか作ったことがなく、貸借対照表も読めない主計官僚が幅をきかす大蔵省において、その主流からはずれた人間が、たまたま人事の都合で銀行局や証券局に配属されてくる。その何も知らない官僚に、金融機関側も「MOF担」(大蔵省担当の職員)をつけ、金融のABCを官僚に教え、また、官僚を接待し、その許認可情報の一端でも探ろう、その差配で自社に有利に運ぼうとしていた時代だった。銀行局や証券局の出す通達の原案まで、その規制対象の「MOF担」が書いていたのである。

 本来専門知識性が高度に要求される金融当局が、その実態を備えず、金融機関の方も、ひたすらMOF担として大蔵官僚への接待技術にたけた人間が役員にのぼりつめる。こうした日本の「金融界」が、「失われた10年」と言わずとも、世界から取り残され、没落の途をたどったことも当然の帰結だったと言えるだろう。

 したがって、「財政と金融の分離」は、橋本政権としては、大蔵・金融スキャンダルを追い風に、どうしても成し遂げなければならない大改革だったのである。

 その結果、大蔵省から金融行政を分離し、今の金融庁とし、そこに専任の大臣を置くとともに、その名称も、「大蔵省」から「財務省」に変更した。並行して断行した「金融ビッグバン」(「フリー」「フェアー」「グローバル」の理念に基づく金融規制大改革)と相まって、政府として「護送船団行政」からの決別を宣言したのである。と同時に、日本銀行についても、大蔵官僚への過剰接待事件の反省と、「財政と金融の分離」の原則に照らし、その幹部から大蔵省出身者を一掃したのだ。

 しかし、この過程においては、当時の大蔵省の、筆舌に尽くしがたい抵抗があった。

 それは、表向き、周到に練られた緻密な反駁はもとより、その強大な予算査定権をバックに、政界や他省庁はもちろん、識者やオピニオンリーダー等に対する周到な根回しを伴ったものだった。正攻法とアンダーグラウンド双方から、時には情報操作、マスコミ操作も交えて、予算編成を通じて得た「貸し借り勘定」を、ここぞとばかり駆使しながら、首相や官邸の外堀を埋めていくという手法だった。

 その過程で、その抵抗を象徴するような「大事件」もあった。「山一証券の自主廃業」(97年11月)である。この山一証券の破たんについては、今でも謎が多い。当時、橋本首相も、三洋証券や北海道拓殖銀行の破たんまではある程度想定していたが、山一証券までは想定していなかった。あまりにも唐突な破たん劇とそのプロセスに、一部の政治家やマスコミの間では、「財金分離阻止のために山一破たんが仕掛けられた」という「大蔵省クーデター説」さえ飛び交った。

 思えば、その半年前、財政と金融が分離されるなら「テロをも辞さない」とする、当時の大蔵省幹部の発言が報道されたことがあった。その真偽は藪の中だが、ともかく、大蔵省が仕掛けた「金融ビッグバン」により、97年秋に北海道拓殖銀行や山一証券が連鎖破たんし、金融パニックになった日本が大不況に突入したことにより、橋本政権が翌年の参院選に惨敗して退陣したわけだから、少なくとも、結果的には、一種のテロだったとも言えなくもないだろう。

 現に、この破たんを契機に、与党・自民党の中からは「やはり金融は財政出動と一体でなければ、いざという時の危機管理はできない」といった「財金分離反対派」の声が大きくなり、一時的に、与党内での「財金完全分離」=「大蔵省分割」のシナリオが崩れたことだけは確かだ。

 ちなみに、「金融ビッグバン」を仕掛けた背景には、財金分離を阻止するため、「金融自由化に当たっての役割がまだこんなに大蔵省にはあるんだぞ」ということを身をもって示したいという思惑があったことを、後に、榊原英資元大蔵省財務官が、ある月刊誌に述懐している。

(次週に続く)。

以前の「今週の直言」はこちら

シリーズ/「財務省支配」の何が問題か?・・・①橋本行革の最大の課題
シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・③予算査定権、査察権が権力の源泉