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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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「国際大競争の荒波」への危機意識がない!・・・TPP反対論

2011年11月28日  tag:

 皆さん、以下の数字が何か、わかるだろうか?

 日本17.6%、韓国36.2%、中国22.0%、米国37.5%、EU30%。そう、いわゆる「FTA比率」、すなわち、各国の貿易総額に占めるFTA(自由貿易協定)相手国との貿易額の比率だ。これで、その国の貿易自由化比率、国の開き方の度合いがわかる。

 これをみれば一目瞭然だが、当面の「国際大競争時代」のライバル・韓国に大きく水をあけられている。その韓国は、この7月にはEUとのFTAを発効させ、先日は、米国との間でもFTAを批准させた。ライバルは日本のはるか先を行っているのである。

 よく、TPP(環太平洋経済連携協定)参加にどんなメリットがあるのか、という問いかけがされる。資源に乏しい日本は、人材と技術を駆使し、付加価値の高い「モノ」や「サービス」を作り出し稼いでいく、すなわち、国を開いて生きていくしかないのだ。この「国際大競争の荒波」を知る人たちにとっては、今、日本で「TPPへの交渉に参加すべきか否か」といったことを議論していること自体が信じられない思いだろう。日本が置かれている現状について、まるで危機意識がないと言われても仕方がない。

 そうした中、先日、ある衝撃的なニュースが走った。あのパナソニックが、プラズマTV用パネルを製造する「尼崎第3工場」、液晶TV用パネルの「茂原工場」の生産を停止するというのだ。人員も、来年3月末までに一万人以上削減する。ソニーもTVの販売目標を半減させることを発表した。

 また、トヨタは、米韓FTAの発効で関税がゼロになることを見越して、米インディアナ州で生産する車を韓国へ輸出することを検討中だ。炭素繊維の世界トップメーカーの東レも韓国亀尾に工場を建設中だ。こうした例は枚挙に暇がない。

 薄型テレビで日本メーカーは韓国メーカーの後塵を拝してきた。日本でこそ量販店には、シャープ、ソニー、パナソニックといった日本製のTVが並ぶが、一歩、日本の外に出れば、サムスン、LGといった韓国製のTVが席巻している。昨年の欧州シェア―では、サムスンが19%で一位、 LGが13%で二位、やっとソニーが10%で三位だ。

 それが、韓国・EUのFTA発効(今年7月)で、薄型TVの14%の関税が韓国メーカーにはなくなる。車も現代・起亜の台頭が著しいが、その韓国車には10%の関税がなくなる。ちなみに、米国と韓国との関係では、カラーTVは5%、乗用車は2.5%(トラックは25%)の関税がなくなる。

 「生き馬の目を抜くような」世界の大競争市場では、日本の企業、特に製造業にとっては、こんな現状は堪えがたいことだ。法人税も電気料金も世界一高い、急激な円高に民主党政権はなす術を知らない。おまけに競争国とは関税や閉鎖的な国内制度、規制の維持で極めて不利な状況に置かれる。このままだと、企業の海外逃避は一層加速し、日本人は一体何を「飯のタネ」にしていったら良いのだろうか。TPP反対派も、まさか「農業で一億三千万人を喰わせていきます」とは、さすがに言わないだろう。

 これは単なる経済界側からの「脅し」ではない。各種統計によれば、日本の製造業の海外進出は加速度的に増えている。

 「海外現地法人の動向」(2011年4-6月期/経済産業省)によれば、海外への設備投資額は68.7億ドルで、前年同期比で38.7%増、5期連続のプラスだ。「設備投資計画調査」(2011年度/資本金10億円以上の大企業を対象)では、製造業の海外設備投資は、対前年度比54.7%増、海外/国内設備投資比率は51.4%、自動車では127.9%という。日本における「産業の空洞化」は着実に進んでいるのだ。

 その危機意識がTPP反対派にはまったく欠如している。「関税は撤廃しても大した率ではない」とか、「急激な円高の方が影響が大きい」とか呑気なことを言っている。今、日本企業が、特に製造業が置かれている状況は、法人税も下げ、円高も是正し、電気料金も下げ、貿易・投資の自由化も進める、すべてを「合わせ技一本」でやっていっても生き残れるか否かの瀬戸際に立っているのだ。

 「米国の車の関税がたった2.5%で撤廃してもメリットがない」などと曰う輩は、この国際競争の荒波で「鉛筆一本」惜しんで使う企業のコスト感覚すら知らない。「たった2.5%」でも車一台について4~5万円の違いが出てくる。今でも150万台以上の車を米国に輸出している日本車メーカーにとっては死活的だ。ちなみに、世界全体で日本車メーカーは車の関税を年1400億円払っており、これは全社の経常利益の1割に当たる。これがどうでも良いとはとても言えないだろう。

 ことほど左様に、相変わらず選挙目当ての「農協票、しがらみ票、目先の百票欲しさ」の、日本の守旧派政治家のレベルは、まだまだ発展途上国並みだ。TPP等貿易の自由化が問題となると、いつも被害妄想たくましく「受け身」「内向き」でしか対応しない。

 もう日本は世界有数の経済プレイヤーになったのだから、「従属変数」ではなく「主変数」として、世界のルールメイキングに主導的な役割を果たす、という覚悟を、特に政治家は持たなければならない。

 やれ、TPPに参加すれば、外国産品の流入で農業が壊滅するとか、混合診療の解禁や株式会社の参入で医療が崩壊するとか、私はまったくそうは思わないが、百歩譲って、仮にそうであるにしても、まずは交渉に参加して、しっかりと自らの主張を訴えればいい。それがまさに政治のリーダーシップというものだ。交渉する前から「米国流のスタンダードを押し付けられる」といった敗北主義では、この問題に限らず、この国を主導していく資格はない。

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