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シリーズ「集団的自衛権」を考える・・・⑨機雷掃海も個別的自衛権で可能

2014年6月30日  tag:

 集団的自衛権に関する自公協議が実質上終わり、明日7月1日、閣議決定されるようだ。各種世論調査でもはっきりしているように、こうした戦後の安全保障政策の大転換については、まだまだ十分時間を割いて議論すべきだというのが国民の意思だろう。


 しかし、安倍首相は、とにかく、支持率が高い間に、こうしたコントラバーシャル(議論百出)な問題は通しておこうという魂胆のようだ。国会でも、今月の14日、15日のたった二日間だけ予算委員会の閉会中審査をやるだけ。これでは問題を先送りするだけで、秋の臨時国会は、具体的な個別法の改正等をめぐって、また紛糾することだろう。


 いずれにせよ、我が結いの党は、政府が提出した15事例について精査した結果、現実には起こりそうにない、架空の事例を除いて、基本的に個別的自衛権あるいは警察権の範囲で対応し得るという報告書を先週とりまとめた。要は、従来の憲法解釈を現場のニーズ、軍事の常識に照らして適正化することで、近時の安全保障上の要請には応え得る、わざわざ「集団的自衛権」という概念を持ち出すまでもない、という内容だ。このうち、先週は、米艦防護や弾道ミサイル迎撃の例を検証した。今回は「国際的な機雷掃海活動への参加」について述べよう。


 結論から言えば、「わが国の船舶が多数航行し、輸入する原油等の大部分が通過する海峡の近隣」における機雷の敷設は、航行船舶全てが攻撃対象となり得る無差別的なものであるから、わが国の船舶、あるいは我が国にとって存立に不可欠な「重要物資」に対する武力攻撃の着手と見なし得る。従って、個別的自衛権で十分対処可能であると考える。


 ちなみに「わが国に対する武力攻撃が発生し、わが国が自衛権を行使している場合において、わが国向けの物資を輸送する第三国船舶に対し、その輸送を阻止するために無差別に攻撃を加える(中略)ような事態が発生した場合において、例えば、その物資が、わが国に対する武力攻撃を排除するため、あるいは、わが国の生存を確保するため必要不可欠な物資であるとすれば、自衛隊が、わが国を防衛するための行動の一環として、その攻撃を排除することは、わが国を防衛するため必要最小限度のものである以上、個別的自衛権の行使の範囲に含まれるものと考える」(1983年3月15日参院予算委に対する谷川防衛庁長官による政府統一見解)とされている。


 従って、この見解を援用すれば、わが国船舶のみを対象にしない国際的な機雷掃海活動への参加についても、それが「わが国の生存を確保するため必要不可欠な物資」、すなわち、中東「原油」の輸送確保のためであるならば、過去の政府答弁に基づいて個別的自衛権で対処可能であると解せられる。


 ただし、よく例に出される「ホルムズ海峡の機雷封鎖」であるが、その主体として想定される国、イランついては、専門家ほど、口をそろえてその可能性はほとんどないということのようだ(以下は朝日新聞6月17日から引用)。


 核問題に詳しい秋山信将一橋大教授は「イランにとって喫緊の課題は、制裁で大きく減った原油輸出の回復と経済再建だ。各国と交渉を進めるなか、ホルムズ海峡を封鎖する可能性は極めて低い』と指摘する。


 日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究主幹の坂梨祥氏は「日本の石油備蓄は半年分あり、ホルムズ海峡が封鎖されても長期的な影響が出る可能性は低い。戦時の掃海艇派遣を考えるより、まずイランとの長年の信頼関係を生かし、戦争を回避する外交に努めるべきだ」と話す。


 前イラン大使の駒野欽一氏も「イランが、機雷によるホルムズ海峡封鎖というラストカードを自ら切ることはほぼないだろう。この海峡はイランにとっても重要な生命線だからだ。欧米による2012年の経済制裁強化の影響で、イランの石油輸出は半分ほどに落ち込んだが、国家予算に占める石油収入の割合は45%ほどで変わっていない。石油の大半はホルムズ海峡経由で輸出される。イランは海峡を封鎖すれば自分の首を絞めて経済的に破滅することを深く認識している」。


 他の事例もそうだが、事ほど左様に、ひたすら「集団的自衛権」という領域に踏み込みたいがためだけの、現実には起こりにくい、あるいは、そうした事態が起これば、在日米軍、日本本土も同時に武力行使に巻き込まれるような事例(個別的自衛権で対応)ばかりが並んでいる。


<<バックナンバー>>
「集団的自衛権」を考える・・・①「限定容認」か?「個別的自衛権の解釈適正化」か?(2014年04月14日号)
「集団的自衛権」を考える・・・②自衛隊の海外派遣(派兵)にはしっかりとした歯止めが必要(2014年04月21日号)
「集団的自衛権」を考える・・・③日本にはイラク戦争の総括がない!(2014年04月28日号)
「集団的自衛権」を考える・・・④解釈改憲する方に重い挙証責任(2014年05月12日号)
「集団的自衛権」を考える・・・⑤なぜ「集団的自衛権」でない事例を掲げたのか?(「安保法制懇」報告を受けた安倍首相会見)
「集団的自衛権」を考える・・・⑥法律ではなく憲法上の歯止め必要(2014年06月9日号)
「集団的自衛権」を考える・・・⑦「先制的自衛」「武力行使の着手」という概念を駆使(2014年06月16日号)
「集団的自衛権」を考える・・・⑧集団的自衛権を持ち出すまでもない(米艦防護や弾道ミサイル迎撃)(2014年06月23日号)

シリーズ:「集団的自衛権」を考える・・・⑧集団的自衛権を持ち出すまでもない(米艦防護や弾道ミサイル迎撃)
シリーズ「集団的自衛権」を考える・・・⑩この閣議決定は「集団的自衛権の限定容認」か?_1